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悪人 ★★★★★

 地上波でやってたのを録画して観たんですが……地上波でやる映画らしからぬ、良い作品でした。ありがちな愛の逃避行ものかと思いきや、もっとヘヴィなテーマで、いい意味で裏切られた。
 まず言っておくと、善悪どうこうといった要素には、ぶっちゃけあまり興味が湧きませんでした。そういうのはかつて観た『シークレット・サンシャイン』とかの方が強烈だったから。
 素晴らしいと感じたのは、鬱屈した空気感をこれでもかときっちり描写していたこと、そしてその中の群像劇。寂れた田舎の漁村、そこで暮らす人々、加害者の関係者に対するマスゴミの鬱陶しさ、この潮臭いジメジメ感が正に日本映画(笑)だからと言って雨中、父親が娘の亡霊に語りかけるシーンはいらんだろと思いましたが
 そんな感じで終始笑い所もない作品で(個人的には大学生の追い詰められた時のヘタレっぷりや、ビッチの自業自得ぶりに吹き出してしまったんですが)「後味が悪い」などの評価も見られますが、自分は全然そう感じませんでした。何故ならちゃんと救いが用意されているから。祐一にはちゃんと待っててくれる人がいるじゃないですか。名前も割り振られていない、バスの運転手や大学生の友人が見せた善意や義憤があったじゃないですか。
 あと、主人公とヒロインが何故惹かれあったか、そこをどこまで理解できて感情移入するかで見る側の評価が変わってきますね。別に出会い系で知り合った女を締め殺した経験がなくても(爆)、長期間閉塞的な環境で生活した経験があったり、心に仄暗く濁ったものを湛えている(いた)人間なら、多分分かるんじゃないかと。
 自分は正直主人公に感情移入できませんでしたが、それでも高評価ですよこれは。骨子はシンプルですが、丁寧な作りと役者の演技が光る作品でした(2011.11.9)

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