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キック・アス ★★★★★

 真っ先に思ったのが、『なんかラノベみたいだな』ということ。
 例えば、冒頭のモノローグ。ラノベの文章みたい。
 取り柄も致命的な欠点もない、空気に近い存在の主人公。ラノベの主人公みたい。弱いしオタクだし、なんかオタク層に感情移入させるような設定じゃないですか。演じるアーロン・ジョンソンがイケメンなことも、どう見てもイケメンなのにフツメン扱いされるラノベ主人公みたいじゃないですか。
 そして、半ば無双状態でバッサバサ敵を蹴散らしていきながらも、キュートさと時折見せる弱さが魅力的なヒロイン的存在。それっぽいじゃないですか。
 そんな感じでナード色が強いのに、ファンタジーな要素を排除している所が面白い。超能力もモンスターも出てこなく、重火器や刃物、棒を武器にマフィアとドンパチやらかし、またyoutubeやiphoneといったネット機器を多用しているという、実に現代的な作品なんですよね。
 従来のヒーロー物へのアンチテーゼ的な設定なのに、ちゃんとヒーロー物の王道というか、定番シーンが入っているのがまたいい。クライマックスの空を飛ぶシーンとか(携帯用ロケットみたいので)、キックアスとヒットガールが昇る朝日をバックに握手を交わし、太陽を眺めるシーンとか。
 他の要素も凄くクオリティが高い。BGMも挿入歌もガンガンに盛り上げてくれるし(特にヒットガール初登場時のBanana Splitsが最高にシュールでキュート)、カメラ演出もいい。キックアスとビッグダディをヒットガールが救出する時のフラッシュと暗闇をバチバチ交錯させるやつとか、マフィアのアジトに乗り込む時のヒットガールのアクションとか。何かヒットガールのことばっか書いてるな(笑)まあ仕方ないですよね。だって可愛いんだもん。特にスクールガール姿+ツインテールの組み合わせ。萌え〜(爆)
 でも良く言われている『彼女を主役にすべき』という意見には個人的には賛同しがたいです。この作品はやはりキックアスのヒーローとしての成長物語、ってのが主軸にあると思ってるので。ダサくて弱い奴が葛藤や悔しさ、無力感などに打ちひしがれ、物理的にも精神的にもボロボロになりながらも、勇気と情熱を振り絞って、成長して本当のヒーローになる……燃える王道じゃないですか。クライマックスに一番活躍したのは確かにヒットガールですが、大ボスにとどめの一撃をくれたのはキックアスという所だってそう。とどめを刺すのは主人公の役回りって昔っから決まってますからね。
 また登場人物も、どいつもこいつも良い。キックアスとヒットガールはもう書いたから省略するとして、娘を戦闘マシーンとして育成しながらも、決して愛情を忘れてはいないビッグダディにしても、作戦のため近付いたのにキックアスと意気投合してしまい、けど結局最後は殴り合うハメになってしまうレッドミストにしても。
 これはもう万人に勧められる王道映画……とは決して言えないのがこの作品である(笑)fワードや卑語が乱舞しまくってるし、グロいシーンや18禁なシーンも多いし。地上波じゃ多分無理だろうな。でもこれはお勧めですよ。個人的には痛快な傑作。エロやグロが苦手な方以外なら。あとオタク男子は是非観て欲しい(2011.10.27)



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