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善き人のためのソナタ ★★★★★

 恥ずかしながら、自分は統一前の東ドイツについては全くの無知です。
 しかしこれは名作だと胸を張って言うことができます。すっごい重い。社会主義の中における強固な監視システムの中で生きる人々の様々な感情を克明に描き出している。
 やはり重要なのは、ヴィースラーが監視を続けていく内、徐々に感化されていく所。
 ただ、個人的に来たのは『善き人のためのソナタ』を聴いて涙を流すシーンではありませんでした。ドライマンとクリスタの情事を盗聴した後、自分もコールガールを抱いて、事を終えた後に「もう少しここにいてくれ」と頼むシーン。ここが凄い来ましたね。エロがどうとか抜きで。
 ヘムプフ大臣もいいキャラしてます。作中でも言われてるように基本的にクズ官僚なんですが、クリスタのファン。そして国家への忠誠との狭間で揺れながらも、結局は後者を選択する人間臭さ。
 このようにシュタージの人間が完全に悪で、反体制側が正しい、という切り分け方をしてないんですね。音楽も作中BGM含め素晴らしいです。
 そしてラストが非常に美しい。クリスタが死んで終わりだったら「ハァ?」でしたが、ちゃんと続きがあったのが本当に良かった。
 欠点らしい欠点は特に見当たりませんでした。派手さなんかないけど物凄い綿密に作り上げられた、リアルな人間ドラマ映画。スタッフロールが流れ終わった後も、静かな感動に浸り続けて数秒間動けませんでした。逸品(2011.10.27)



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