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KOKIA




1st Album songbird 1999年 ★★★★
2nd Album trip trip 2002年 ★★★★
8th Album Real World 2010年 ★★★★★
9th Album moment 2011年 ★★★
Compilation Album 心ばかり 2012年 ★★★★★
10th Album Where to go my love 2013年 ★★★★★








songbird 1st Album

01.私は歌う小鳥です ★★★
 シンプルにコードを鳴らすピアノをバックに、軽くこぶしを聴かせて歌う。
 元ちとせほどのくどさを感じさせないのは、彼女がそういう音楽を通過していないからでしょうか。

02.そよ風が草原をなでるように ★★★★
 ピアノに加えアコギ、ドラムとベースも入る「頑張りすぎないで」ソング。
 そんな歌詞に合わせて、歌い回しのニュアンスを柔らかくしています。

03.I catch a cold ★★
 風邪を引いて看病されることで、大切な相手の存在を再確認、みたいな内容。
 それだけで終わらず、後半はケンカの描写もあったり。風邪だけで良かったのでは。
 歌メロが跳ねるようというより、字余り気味なのも気になる。
 曲調は、Coccoのキュート系が好きなら気に入るんじゃないでしょうか。

04.白い雪 ★★★
 アコギをメインにKOKIA先生が儚げに歌い上げるバラード。
 場面毎で歌に強弱をつける手法はベタなアプローチですが、それゆえにツボに入りやすい。実力的にも確かだし。今の更に深化した歌唱力で歌ったら、凄い説得力がありそう。
 歌詞はいくら何でも白白言い過ぎのような。分かっとるわと言いたくなる(笑)

05.River ★★★★★
 美しい大自然や川の流れに、未来の生き方を重ねて憧れを抱くオーガニックナンバー。
 正に留まることなく流れる川のような歌メロが特徴的。歌が上手いからこういうメロが映える映える。音の伸ばし方が本当に綺麗。
 ドラム音は抑え気味にして欲しかったですね。完全にメロディを前に押し出す形で良かった。

06.昼下がりの時 ★
 曲調通りの穏やかな風景を描いた曲。物語というより、昼下がりの庭先をずっと固定カメラで撮影しているような感じ。
 はっきり言って印象に残りません。ハミング使ってくるのも予想の範疇でした。昼下がりの情事とかなら良かったのに。

07.You ★★★★
 今はもういない「あなた」への慕情を歌うバラード。
 ヒットチャート上位でも聴けそうな、ベタな曲。しかし歌はベタではない。普通だったら苦しさと切なさと心細さを隠しもせずベロンベロンに吐き出しそうなもんですが、先生はあえて優しく柔らかく歌うことを選択。きめ細かいビブラートが琴線をグリグリ。
 これが個人的に大ハマり。リングしか見えない疲労状態の三井寿が如く、もう先生の歌しか聴こえぬ。

08.Live Alone ★★★★
「愛は地球を救うのかな」「これ以上を愛を愛を汚さないで」
 そうだよ、薄い本とかでシコシコやってる場合じゃないんだよ。紙とか命の種とかが消耗しちゃうんだよ。俺の事か?
 ……少なくともこの曲で焦点を当ててるのは、地球というより人類の気がするんですが。それはともかく、この方が歌うからこそ説得力のある歌。しかしファン以外が聴いても「貴様も黄色いシャツ着てる連中と同じか!」と思われかねないのも否めない。
 これが一番曲に力入ってますね。「悲しい目をした〜」から楽器のアタックを強くして急展開を見せる構成は上手い。
 呼応するように歌もガッと攻勢をかけて来る所も素晴らしい。しかしギターはいらん。

09.ありがとう… ★★★★
 代表曲とも言える、飼い犬への感謝バラード。
 基本的にはコードを押さえるだけのピアノとアコギをメインに、切々と飾らない言葉で歌を紡いでいく先生の歌に、涙腺を破壊された人多数。
 この曲も、変に大仰に歌わない所がいいですね。

10.エリカ ★★★
 優等生なイメージを覆す「わけもなく学校さぼったり」といった歌詞にちょっと驚き。
 しかしその後は「夜の町にあこがれたり」憧れるだけかい。「試験前の一夜づけも」一応勉強する意志はあるんかい。やはり素行は悪くないようです。歌詞の構成も場面ごとできっちり時間軸や言いたいことが分けられていて、クソ真面目なくらいガッチリしてるし。そもそも本人の実体験なのかどうかは知らないんですけどね。
『進め』というメッセージを強調したいがためか、アタックを強めにしているように聴こえますね。いいアイデア。

11.愛しているから(Sincerely Version) ★★
 なんか#7みたいなヒットチャートバラードだな……と思いながら聴いてたんですが、あちらとこの曲は作詞作曲が外注のようで。
 あちらは先生の歌唱力で見事聴かせる完成度まで底上げされてましたが、この曲は微妙。歌は良いんですけど、ほんのり漂う歌謡曲臭がミスマッチ。プンプンさせないだけマシと捉えるべきか。
 歌詞は意外と彼女が書かない、ベッタベタの失恋がテーマ。まあアルバムの雰囲気をブチ壊しにはしてないからいいか。


 実力やジャンルレスなタイアップ、海外での評価の割にどうもあまり一般層に知られていない感のある歌姫・KOKIA先生の1stアルバム。
 後の作品と比較すると、色々と違っていて面白い。まず相互リンクして下さってるproser13さんも触れてますが、声が幼く聴こえる。少女みたいというか、少女のあどけなさが残る女性というか。
 音の方もまだポップス色が割と濃く残っています。変に音数を多くしたりせず、歌の力に全てを託すシンプル志向なのはこの頃から変わらぬスタンス。ただ鳴らすだけじゃなく、音の強弱にも気を遣っている所には好感を持てました。
 歌はこの頃から充分に上手いです。あらゆるジャンルに適応する上手さではなく、自分の歌いたいジャンルはハイレベルでやってのけるタイプの上手さ。同じ柔らかく歌うにも細かいニュアンスの使い分けをしたり、息の抜き方など、聞き惚れてしまうレベルですね。
 人間の後ろ暗い感情や、世界を取り巻く悪意には焦点を向ける様子がまるでないので、綺麗事に吐き気がするリスナーには、乗り物に弱い人間が宇宙飛行士の訓練をするくらい厳しいアルバムか。かくいう自分も、歌唱力や声のおかげで聴いています。別に性悪説を支持してる訳ではありませんが。
 逆に言うと、小細工に一切頼らず、歌一本にて力づくで聴き手を納得させてしまう、超肉体派アーティストとも言えます。『ありがとう…』だけ聴ければいいやとか思わずに、ちゃんと他の曲も味わって下さいね(2011.12.15)







trip trip 2nd Album

01.調和 ★★★★★
 エンヤっぽい雰囲気の曲。
 後半ではKOKIA語を披露。単語作りのネタ自体は単純なのに、ちゃんとケルトっぽく聴こえてしまう所が凄い。

02.次会う時は ★★★
 奥ゆかしい想いを歌っている……のかと思いきや、後半では「いつもいつも想ってる」と、重たさが滲み出す情念を披露。
 温かみのあるアコギやハーモニカが鳴る曲調のような穏やかさを感じさせない。何かこう盛り上がってるSEとか入れてる場合じゃねぇ。
 ああでも若干苦しげに(表現的な意味で)歌ってるからそういう意図なのか? そうだとしても、歪んだ音を入れて来ない辺り上品な彼女らしい。

03.Say Hi!! ★★
 ギターが目立っていて、彼女の曲にしてはロック色が少しだけ濃い。
 ロック的な聴き方をすると、ベースがほぼルートで8分を刻んでるだけなので物足りない。ドラムもあんまりパターンを変えてこない。
 でも先生はロックバンドを組んでる訳じゃないので許可します(爆)代わりと言っては何ですが、サビで鐘の音を入れたりと、綺麗なメロディを鳴らすことには拘っている模様。
 英語の多用も相まって、とにかく格調高い清廉さみたいなのは出ています。

04.The rule of the universe ★★★★
 ケイト・ブッシュっぽい、全英詞のミディアムバラード。
 ユニバースを表現してるのか、スペーシーな音が特徴的。ベースもけっこう動く。何故前の曲でやらない。

05.Princess E[´]HIME ★★★★
 ミニマルなアンビエント風トラックに乗せて、ウィスパーで歌う先生。複雑に作り込んでいる訳ではないんですが、どう聴いても飛び道具曲。
 歌詞もかなり遊んでます。これはある意味、SEX MACHINEGUNS『みかんのうた』にも匹敵する愛を感じますね。

06.天使 ★
 サビでガッと盛り上げてくるんだろうな、という予測に見事応えてくれる曲。
 これは調和は調和でも予定調和な曲でした。いくら歌が上手くて楽曲を底上げ出来るとは言っても限度が存在するのだ!

07.ぴんくの象 ★★★
 延々と続くピアノリフとエキゾチックなコーラスが聴き手をトリップさせる……というか歌い手が先にラリっております。
 人を食ったような歌い回しが色んな意味でらしくない。でも面白いからいい。面白ければ何でもいいのです。

08.Hello passing days ★★★
 ヒィィィィィィ!!なんて歌詞だ!
 ちなみに自分は『巡り合えたのは偶然じゃない系』より、『一は全、全は一』的な思想の方に共鳴するタイプなんです。
 曲はポップスとかケルトとか大陸系とかを色々違和感なく混ぜてて面白い。

09.花 ★★★★
 同じ歌詞を繰り返してばっかりなのに、卓越した歌唱と巧みなアレンジで退屈に聴かせない、技が光る曲。

10.人間ってそんなものね ★★★★★
 中々の音圧でシリアスに攻め立ててくる、人間の酸いも甘いも全てを包んで歌った曲。
 わざとブレスも入れることが、より曲の生々しさを引き立てていて良い。これはロック的な聴き方をしても割かし大丈夫。歌い回しの綺麗さがやっぱり消しきれてないんだけど。

11.足音 ★★
 ケルト風味を所々に感じさせる曲。
 歌唱力頼みの作りになってるように聴こえる。実際応えてはいるんですけど、どうも印象が薄い。

12.tomoni ★★★★★
 オーガニック色の強いワールドミュージック。
 歌詞はSATSUGAIせよとか、そういうセンスに共感できるなら最高にハマると思います。
 ダイナミズムの効いた音や歌が素晴らしくて、ただただ聴き入ってしまう。歌詞は見ない方がいいです。

13.a gift ★★★★★
 全ての生命を祝福するかのような、安らぎに満ちたバラード。
 この曲も架空言語ですが、実にいい。本当に歌声だけを堪能できます。ベホマズン級のヒーリングソング。
 これ以上言葉はいらぬ。黙してただ目頭を熱くするのみ。


 弾き語りに近いスタイルを早くも放棄し、色んな音楽性を披露するようになった2ndアルバム。お分かりと思いますが、tripは旅とラリる方のダブルミーニングのようです。そう、先生はクソ真面目なだけじゃないんですよ。先生ってそんなものね。
 悪くない、悪くない所か、かなりいいですよ。振り幅が広いし。ただし彼女の本質というか、輝きを放つのはやはり真面目な楽曲の方みたいですね。あとはイカれた曲調と歌で、シリアスなテーマをやれば完璧だったんですけど。
 並のアーティストなら★5つレベルなんですけど、先生は並のアーティストではないので、あえて4つとさせて頂きます(2011.12.22)







Real World 8th Album

01.Birth
02.Road to Glory 〜for Dragon Nest
03.U-CHA-CHA
04.REAL WORLD
05.最終上映
06.Love is Us, Love is Earth
07.ジュゴンの空
08.孤独な生きもの
09.single mother
10.君をさがして
11.音の旅人
12.私が見たもの
13.この地球がまるいお陰で
14.The woman


 実際にサハラ砂漠で見た景色から受けたインスピレーションから生まれた、雄大で優しい楽曲に乗せられる歌声が、時に凛と、時に神々しく、時に慈母のように響く。
 いつものように言葉や曲だけ抜き出せばギップルが悶えそうな世界・生命賛美なんですが、とにかく歌の説得力が圧倒的なので全然引っ掛かりを覚えない。というかますます上手くなってるような。
 愛は地球を救わないけど、このアルバムを聴く人は救われます(爆)傑作(2010.4.10)







moment 9th Album

01.moment 〜今を生きる〜
02.te a te
03.from 16
04.大人のオオカミ
05.大丈夫 だいじょうぶ
06.本当の音
07.優しい調べ
08.空でつながってる
09.愛と平和と音楽と
10.5つ目の季節
11.もう一度…


 ステージ・レコーディングなる手法(しかもオーディエンス付き)で収録されたアルバム。総合的な実力に相当長けてなければとても真似できない芸当ですが、ここまで仕上げてきていると素晴らしいとしか言えない。自分の3000円イヤホンでも神聖な歌声が深々と鼓膜から脳に伝わってくるぜ!
 歌唱面では何も言うことはないんですが、ミックスでちょっと気になる点が。サ行、特に『シ』の音が聞き苦しかったりしている。個人的には臨場感で片付けられなかったです。ちなみにライヴ盤っぽさはなく、スタジオ盤に近い感触です。
 曲の内容ですが、『説得力のあるワールド(orライフ)イズビューティフル路線』は変わらず。前作よりも詞の内容が地に足がついていて、日常的なシーンが多いですね。飾り立てている訳ではないのに、ドラマティックさが割増で聴こえるのは彼女が纏うオーラのせいでしょうか。
 どの曲も同じようなミディアム〜スローバラードなのがちょっと聴いていてダレるかな。コンサート的な雰囲気を意識してるのかも知れませんが。1曲辺り平均して5〜6分あるのも冗長さに拍車を掛ける。#4・6・9辺り、特に#6はいい曲なんですけど。
 極端な話、1時間の曲を1曲収録とか、パンク並の長さでパッと終わる曲のみで構成とかの方がmomentって感じがすると思うんですけど。圧倒的な歌唱力の再確認はできましたが、とにかくアクセントが欲しかった1枚(2011.6.1)







心ばかり Compilation Album

●DISC 1
01.Yes I know
02.もくじ
03.Whispe
04.もう愛せない
05.tell tell 坊主
06.iしてる
07.人魚の夢
08.僕の気持ち
09.time to say goodbye (duet "KOKIA & PIANO")
10.愛のメロディー (soundtrack ver.)

●DISC 2
01.last love song
02.クルマレテ
03.クリスマスの響き
04.白い犬と踊る夜
05.ありがとう… (the Coquillage edition)
06.Candle in the Heart
07.あの日の私に
08.心の季節
09.大人のオオカミ (The 5th season concert version)
10.moment 〜今を生きる〜 (The 5th season concert version)
11.世界を包む Ribbon in our heart


 過去のアルバム未収録曲などを集めた作品。心というか『未収録ばかり』。
 2枚組で約100分とかなりのボリュームですが、一言で説明がつきます。究極的にはKOKIA先生の歌とお言葉を楽しむ作品。以上。いい意味で、伴奏は伴奏でしかないです。
 飽きさせないことを意識はしてるのか、結構詞は書き分けてる印象。全英語詞とか、ダウナーな感じだったり、あと#1-6の軽くスイ〜ツみてぇな歌詞とか。ただしKOKIA語はありませんが。
 歌い分けに関しては説明不要でしょう。ホントにこの人は国内屈指のレベルで卓越してる。#2-4のようなフレンチポップスも、日本人離れした能力でしなやかに歌いこなしてしまうし。
 既発曲についても、いずれも良い出来。もうこの歌唱力ならアカペラヴァージョンとかでもアリだと思えてくる。
 スローな曲調が並ぶアルバムなのに激しく心揺さぶられる、至福の100分間でした。先生の歌のチカラを、改めてまざまざと思い知らされました(2012.7.15)






Where to go my love 10th Album

01.Dance with the wind
02.愛はこだまする
03.you are not alone
04.liar liar 〜ロマンティックワルツ
05.something blue & something red
06.ヒトの中にあるもの
07.微笑みを忘れないように
08.夢の途中
09.映画のような恋でした
10.Where to go my love(Piano ver.)


 これが正に裸一貫音楽ッ!!
 斬新さも難解さもない、必要最小限のモノだけで作る、シンプルさを追求したポップスの究極形の一つと言えるでしょう。
 作詞作曲編曲全てに飾り気がなく、おまけにスロー曲ばっかり。そりゃ人によってはすぐ眠くなるでしょう。そういう人を僕は揺すって起こすことはできません。
 しかし、だからと言って退屈と切り捨てることもできません。何故かと言うと、やっぱり歌が心に沁みるからです。
 しかもこれを、歌唱力でグイグイ引っ張るという形でやっていない所が凄い。声質に助けられている面はあるものの、技術じゃなく本当に『心』で歌っているのが伝わってきました。これが本当の『心ばかり』ではないでしょうか。
 こういう楽曲を、人類を超越した神的視点からではなく、あくまでも一人間として歌っているのも良し。先生は時折「お嬢様育ちの綺麗事」と揶揄されることがありますが、そのお嬢様育ちの綺麗事なりに清濁併せて人生色々経験していて、それを音楽に乗せている訳ですよ。今作においても例外ではありません。
 ちなみに自分が今作で一番好きなのは、アルバム中でもちょっと毛色が違う#4。フランス音楽からの影響が見受けられるスローワルツ曲で、煌めくロマンと微熱程度の情熱をしっとりと先生が歌い上げています。「ララ リ ルン レ ロマンティックワルツ」なんてちょっとした言葉遊びもしちゃったり。
 音楽的なことだけにも触れておきますと、J-POP好きよりも洋ポップス好きに受けるでしょう。今作はワールドミュージックやクラシック要素もほぼ排し、普遍的な現代音楽で勝負してきている感があります。
 お嬢様が歌うシンプルな綺麗事、こちらも裸一貫で受け止めてみませんか? ぶつかり稽古しましょうよ(2013.4.24)







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