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熊木杏里


2nd Album 無から出た錆 2005年 ★★★★★








無から出た錆 2nd Album

01.長い話
02.夏蝉
03.あなたに逢いたい
04.景色
05.おうちを忘れたカナリア
06.新春白書
07.雨
08.説教と楓
09.ムーンスター
10.イマジンが聞こえた
11.夢のある喫茶店
12.祖母と二人で
13.風のひこうき


 女性シンガーソングライター・熊木杏里の2ndアルバム。大分前に、相互リンクさせて頂いているproserさんから勧めてもらったきり放置しちゃってたんですが、この度感想を書き終えられましたのでアップロードしました。遅れてすみません。
 さてさて、どんな内容かと言いますと。路上でキーボードやアコギを弾き語ってそうな感じのシンプルな音楽です。歌唱力もズバ抜けている訳でもなく、普通。
 なのに何故自分がここまで満足したか。それはひとえに、歌詞がとても良かったから。ちなみに詞を抜きにした満足度は★×3ぐらいです。ほぼ弾き語りみたいなスタイルだから、詞に注視して評価しても問題ないでしょう。
 外部へ攻撃性を剥き出しにせず、篭りがちで内省的な世界観がメインで、言葉のチョイス自体は分かりやすいですが、表現が独特。電波系じゃなく、ちゃんと意味が通じるタイプですのでご安心を。ノスタルジーやささやかな平和希求のようなものも含まれているので、割と広く人に受け入れられるでしょう。

「両手を広げて 風に吹かれてみたいけど
 そこで銃弾が飛んでくるか 愛がころがりこんでくるか
 ぼくしだいなんだ」(景色)
「31より先へ進まないのが数字
 次に一日があるのは 人間」(新春白書)
「部屋に三日前に干したままの
 洗濯物に見下されて」(ムーンスター)

 ほんの一部だけ抜粋しましたが、その他にも独自の詞世界を展開しています。
 表現だけでなく構成も上手い。例えば#1では20歳前後の人生を描写して、最後に

「なぜ生きてるの なぜ生きてゆくの
 なにもないから なにかになりたい」

 と締める。これまでの回り道が、この時点でもある意味で結実している訳です。
 また#10では、イマジンをとても効果的にテーマと絡めている。ジョンレノンがどう思うかは知りませんが、僕は名曲だと思いました。これが一番気に入りましたね。
 これだけの感性と表現力があるならば、作家の適性もあるんじゃないかと思います。人生に思い悩む10代後半〜20代前半の女性向け。
 決して駄作だったからほったらかしてた訳ではないということがお分かり頂けたでしょうか(笑)(2013.4.26)






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