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LAST ALLIANCE



1st Album TEARS LIBRARY 2003年 ★★★★
2nd Album UNDERGROUND BLUE 2004年 ★★★★
3rd Album Me and Your Borderline 2006年 ★★★
4th Album the sum 2008年 ★★★★★
Mini Album KAWASAKI RELAX 2009年
5th Album Keep on smashing blue, 2010年 ★★★
6th Album for staying real blue. 2011年 ★★★★★
Best Album c.s.c20022011 2012年 ★★★★
7th Album Seventh Sense 2013年 ★★★









TEARS LIBRARY 1st Album

01.BOY'S DON'T CRY
02.RUN INTO THE FREEDOM
03.偽りのオレンジ
04.LAST ALLIANCE
05.REBEL FIRE
06.BEAUTIFUL
07.プラネタリウム
08.SEE YOU AGAIN
09.SKY IS CRYING
10.ヒダリムキ
11.EQUAL REASON


 良好なメロディセンス+声質が全く異なるツインヴォーカルを加えたメロディックパンクアルバム。
 陳腐なラブソングがなく、カッコつけながらも熱いメッセージの篭った歌詞は好感持てますが、日本語・英語共に歌メロへの載せ方が強引過ぎる部分が目立つのが気になった。
 また冒頭の2曲みたいな、純粋な8ビートロックにはあまり向いていない印象。単調。
 曲名通りバンドの全てを2分弱に凝縮体現した#4、突き抜けたポップな歌メロを有する#7、かなりベタでポップなメロながらも熱い言葉と浮遊感が共存した#10辺りが特に、個人的に好み。
 特に#10の『出来レースに乗ってコケずにいるボンクラ〜』のくだりは某大賞関係の連中に聞かせてやりたい(爆)(2010.1.2)







UNDERGROUND BLUE 2nd Album

01.South Wind Knows
02.CLONE
03.ソリチュード
04.フィルター
05.One Hot Second
06.夢想時代
07.urge
08.GREENS SUNLIGHT
09.時空TRIP
10.置き去りエース
11.ラッキー・ルチアーノに射たれる前に
12.TRUTH IN MY ARMS
13.漂う夕暮れに、消えてゆく日々
14.Letter


 確信犯なのか単なる環境の問題なのか、音(特にギター)が割れ気味。
 半ば実験作のつもりなのか、インダストリアル的な#2、緩やかさが心地良い#7・#10、ロック色の強い#11、哀愁漂うバラード#13など、手広くやろうとしている意識が見える。とはいえ基本的にバンドサウンドで出来ることに限定しているので、散漫さや迷走している感は感じない。いい意味で、広義のエモ・ロックとなってます。#6、#12のようにメロコア・メロパンもきちんと用意されているので、盛り上がりが欲しいそこのアナタも安心(爆)
 ただ松村氏のヴォーカルは穏やか系には向いていないなと(苦笑)発音が曖昧なので歌詞が聞き取れん。逆に安斉氏は非常に向いている。
 個人的ベストトラックはラストの#14。澄んだアルペジオとツインヴォーカルのハモリが美しく、メンバーの結束感を感じられる名曲(2010.1.2)







Me and Your Borderline 3rd Album

01.Break a mirror
02.KONOYUBITOMARE
03.疾走
04.赤い花
05.エイミーシンドローム
06.音のない世界
07.SPIRAL WORLD
08.ゼンマイ
09.gray end
10.FANTASIA
11.Lie of eternity, Paint it blue
12.プロメテウス
13.シェアリングスカイ
14.浄化


 アルバムタイトルが示すように境界線、つまり"争い""生死"をテーマとした楽曲が目立つ。
『鏡の中と外』を歌った#1、『青いシャツの少年と赤い帽子の少年達』を介して争いの下らなさを歌う#2、『生死で隔てられた世界』が舞台の#4と#10、『社会の光と闇』の境界線を突く#7、『人類皆兄弟で平等だぜ!』的な#13、『戦争によって分けられる勝利と敗北』の虚しさを叫ぶ#14辺りが分かりやすいか。
 またこの辺りから歌詞のファンタジー要素がより増えてきたような。代表曲である#3がアニメタイアップだからでしょうか(笑)#12なんて下手したら完全にアニソンだもんな。個人的にはファンタジーも別に嫌いじゃないし、引き出しが増えたと解釈できるので全く問題ありませんが。
 前作同様、曲幅のバランスが良いのでとりあえず色んなロックリスナーが安心して聴けるアルバム(2010.1.2)







the sum 4th Album

01.change by 1
02.Proud of Scar
03.無重力 ONE WAY SHUTTLE
04.砂漠と幻想
05.片膝の汚れ
06.PERFECT GAME
07.揺れた秒針
08.ロンサムワールド
09.Drag On
10.WORLD IS MINE
11.雨上がりにグラフィティ
12.群青海月


 ドラムワークスやリフがより手数を増して頼もしく、また最大の武器である憂愁を帯びた美メロも更に強化されております。
 不退転の覚悟を歌ったシャッフルナンバーの#3、前述の二要素を端的に表しながらもいい意味で曖昧な言葉と鮮やかなコントラストを込めた歌詞が印象的な#4、イントロと間奏でスパニッシュギターが迸る#5、ボサノヴァを取り入れたエモチューンの#12が特にお気に入り。そして個人的には意外にも、ミディアムバラードの#8が一番グッと来ました。というか彼らの曲の中ではコレが一番好きかも。サビの歌メロが最高なんですよね。
 よりファンタジックに、より洗練された名アルバム。ラスアラを人に勧める時はこれを聴かせますね(2010.1.2)







KAWASAKI RELAX Mini Album

01.WEDGE
02.TODAY
03.DAYS
04.8HEARTBEAT∞
05.TOMORROW


 畳み掛ける2ビートと全英詞で統一されたメロディックパンクなコンセプト・ミニアルバム。
 元々彼らがそれぞれラスアラの前にやっていたバンドはこっち寄りのジャンルだったらしく(自分は『片膝の汚れ』から入ったファンなので昔のことは分からない)だからリラックスなんだとか。
 はっきり言って個人的には気に入ってないです。
 枠に囚われない引き出しの多い曲調とウィットに富んだ日本語詞、『the sum』に顕著な憂愁を帯びた美メロといった部分を僕は特に気に入っているので、今回のコンセプトは極端な話、自分の好みの真逆な訳で。普通のメロパンやらんでもいいじゃんと。
 曲そのものの完成度は5曲とも全て高いと思います。が、自分が彼らに求めているものはこれではないということと、満足出来なかった、という意味で星1つにさせて頂きました(2010.1.2)







Keep on smashing blue, 5th Album

01.BLUE LIGHTNING
02.Everything is evanescent
03.NE(W)ROTIC WORLD
04.LOSER
05.サードアイズシンジケート
06.孤島のバスキア
07.TAKE OVER
08.Time Will Tell 〜dear youth〜
09.WING
10.ALLIANCE AIRLINES
11.あやつり
12.願イ型紋白蝶ガ宙ヲ舞ウ
13.HEKIREKI
14.Looking for the rainy sky
15.タイムカプセル
16.赤い花(sweet ANZAI Boy)
17.浄化(angry MATSUMURA Boy)


 初期のアルバムに若干近いですね。自身のルーツであろうメロコア・メロパンを主軸に据えた音。
 ファンには嬉しいでしょうが、個人的には残念。今自分の中でこの辺のジャンルは飽きてきたコンテンツ、つまりアキコンなんです(爆)似たり寄ったりになってない所は好印象。
 しかし方向性を絞ったことで、幅が狭まって勿体ないことになってる楽曲もいくつか。#11・12はイントロ・アウトロで聴かせているような、アコースティックな響きを中心にしたアレンジの方が良かったと思う。
 先行曲の#9を聴いた時点で感じてましたが、松村作詞の曲のこっ恥ずかしさが数割増ししております(笑)北欧メロスピみたいにやたらファンタジックな表現が。確かにメタリックなリフがちょくちょく出てるけど今回。それはいいにしても、人称代名詞がコロコロ変わってる歌詞が多いのはマイナス。安斉作詞のもだけど。
 転調が無理矢理なのは否めないものの、浮遊するお得意の哀愁メロが気持ちいい#3、航空会社のCMにも使えそうな爽快なメロと、少しメタルコア寄りの硬質なサウンドのコントラストが映える#10、エモーショナルなバラード#15辺りが気に入ってます。メロディセンスがまだ枯れてないのは頼もしい。
 初回盤にはボーナストラックとして『赤い花』『浄化』のヴォーカルチェンジver.が収録されてますが、これははっきり言って微妙。
 細かい部分が違うから恐らく演奏も録り直してるんでしょうが、カラオケみたいに聴こえる。歌を作りすぎて滑ってるというか。sweet ANZAI boyやangry MATSUMURA boyと打ち出した手前、普通に歌わないという無言の縛りがあったんでしょうが。
 とはいえこういう試み自体は大歓迎。今後も続けて欲しいです。『砂漠と幻想』『ロンサムワールド』でgloom MATSUMURA boyとか、『無重力 ONEWAY SHUTTLE』でpilot ANZAI boyとかやっくんないかなあ(爆)
 自分はヘビロテするほどハマれませんでしたが、メロコア・メロパン好きなら押さえておいて損はない一枚ですね(2010.11.5)

Kill Em All 『ALLIANCE AIRLINES』のイントロのギターが、『Seek And Destroy』のイントロギターとそっくり。






for staying real blue. 6th Album

01.in my hand
02.Revolution is starting
03.カポネのボルサリーノ
04.スロートワート
05.One
06.虹vs飛行機雲
07.剣戟の響き
08.deandre
09.僕信論
10.Redesign
11.μ
12.stardoubt
13.エンプティハート
14.Precious line
15.静寂の中、その矢は放物線を描く
16.一握りの青
17.Melancholy


「変わらないために、変わり続ける」という、一風堂みたいなスローガンを掲げてリリースされた、前作『Keep on smashing blue,』と対になる今作。
 見事にスローガンを体現しています。ラスアラらしさを残しつつ、新機軸を打ち出している。
 その新機軸の中でも最先端な、初めて外部プロデューサーを迎えて製作されたダンスロック#10は一瞬、サカナクションが始まったかと思った(笑)
 でもこれ、出来は正直微妙。試みとしては今までになくて面白いし、最初聴いた時はおっと思ったけど、メロが分かり易すぎて総体的に安っぽくなっちゃってる。特にサビなんかジャニーズポップスみたい。元々彼らのメロはかなりポップだから、一工夫ないとキツい。サイドギターとベースがほぼ直線的だもんな。
 しかし同じくプロデューサーが携わっている、他の2曲は良かった。#13には彼ら王道のサウンドに見事温もりを注入し、常に現状へ満足しない情熱を歌った歌詞と素敵な化学反応を見せています。
 そして、「なに?RAD?」と曲名を見て思った#9、これがアルバム通しての個人的ベストトラック。彼らの青さ、ファンタジックな世界観を下地にして信念・覚悟・絆を込めたメッセージ性の強い歌詞、ロックとポップさの両方が詰まった音と、ラスアラの全てが濃縮されてます。(短いけど)間奏でアイリッシュになったり、サビでツインVo.がユニゾンしてるのも珍しい。ハモリは多用してるけど完全に同じキーで歌うことってあまりなかったような。二人の声質が正反対だからユニゾンでも映える映える。そこがジャニーズとの違い(爆)
 お得意のメロコア・メロパン・エモコア曲はどれも高い完成度。トップバッターの#1はテンポ良く歌とアンサンブルを叩き込んできて爽快だし、自殺防止のメッセージを込めたと思われる#2、夢破れた喪失感とそれでも足掻く希望を奏でる#12はひたすらに哀愁で熱い。
 そして、怒涛の演奏で駆け抜け、立ちはだかる物を斬り伏せていく#7、これがこのタイプの曲ではベストでした。片膝の汚れが好きな人には感じるものがあるはず。
『ラッキー・ルチアーノに射たれる前に』+『SPIRAL WORLD』のようなダンサブルな雰囲気を持つ#3、いい意味でサビが淡白な#5・#11もクール。今作唯一のバラードである本編最後の曲#15はそこそこ、というか普通すぎというか。
 ボーナストラックの2曲は、入手困難な初期の楽曲。当然ですが、最近の曲より荒削りというか、もっと曲構成とか削ぎ落とせるんじゃって感想が。しかし後者は何だかV系にありそうな曲だ(笑)
 ちなみに今作、MATSUMURAの歌が上手くなってる、というか発音がやけにはっきりしてます。だから彼ら特有の現象・空耳アワーは今作は薄め(笑)
 演奏面では、ドラムが少し大人しくなり、代わりにリードギターが一層派手に動くようになった印象。サイドギターとベースも、もう少し動けばいいのに。ライヴの時弾くのがしんどくなるからやらないんだろうけど。
 また音像が柔らかめになった上、各パートの音のバランスが大分均一化したことでスッキリしたプロダクションに。これは今までの作品のような音が好きだった人にはちょっと物足りなく感じるかも。個人的にはいいんですが。
 総評すると、凄いお勧めしたい作品。手放しで褒めていないのは僕の性です(爆)やっぱ青臭さと熱さと健全さを兼ね備えたのはいいな。実に王道の少年漫画的(2011.6.19)







c.s.c20022011 Best Album

[Disc 1]
01.LAST ALLIANCE
02.一刀旅団
03.Drag On
04.スロースターター
05.MY IDEA
06.Fly again, hero
07.EQUAL REASON
08.MABOROSHI MEMORY
09.Sketch
10.夢想時代
11.One Drop Of Tear
12.片膝の汚れ
13.Melancholy
[Disc 2]
01.TRUTH IN MY ARMS
02.I.O.J.F.K
03.ソリチュード
04.astrogate-0
05.HEKIREKI
06.COLOR DESERT
07.羅針
08.疾走
09.真冬の蝉
10.BOYS DON'T CRY
11.流星涙
12.蒼い銃創
13.KONOYUBITOMARE
[Disc 3]- It's a emotional world -
01.a burning bullet
02.Last Word
03.HEKIREKI 〜Acoustic ver.〜
04.WORLD IS MINE 〜Acoustic ver.〜
05.NE(W)ROTIC WORLD 〜Acoustic ver.〜


 あまりベストアルバムに手を出すことはないんですが、好きなバンドでかつ、未聴の曲が多いから聴いてみることに。
 シングル曲はアルバムとテイクやマスタリングが違う物が多いんですね。またバンドサウンド以外の音も意外と取り入れてます。出しゃばるってことはなく、主に導入のイントロでですが。正直意味があるとは思えない物も幾つかあるんですけど(笑)
 よくある、カップリングは本来のファンが喜ぶ曲だとか、マニアックな曲をやってるといった現象はないので、アルバムしか聴いていない人間でもある程度は楽しめるんじゃないかと。曲順は時系列ではなく、ライヴのセットリストを意識して組んだんだそう。
 アルバムしか聴いていない人間でも、既発曲もある程度は楽しめるんじゃないかと。

 3枚目は新曲2曲に加え、既発曲のアコースティックver.を収録。
 #3-1はエンプティハートの松村版といった所。何か無難。もっと暑苦しさが欲しかった。
 #3-2は攻撃的なメロコア。これはいい意味で無難というか、王道。アウトロでシャウトし出すのには笑いました(爆)ラスアラってメンバーがこういう声出すイメージがなかったので。しかし声が細くてあまり迫力はないな。
 アコースティック曲はどれもシンプルで、歌とアコギを聴かせるための内容。サブタイトルから察するに、HEKIREKI以外は『ワールド』繋がりで選出したんだと思うんですが、だったら何故ロンサムワールドを入れなかった! 個人的には是非聴きたかったのに。美メロだから絶対映えるはずなのに。あとSPIRAL WORLDのことも忘れないであげてください。
 多分3曲を、安斉メイン・松村メイン・ツインヴォーカルとバランス良く選びたかったからこうなったんだろうけど。だったら片膝の汚れの方がいいと思うんだけどな。

 ちなみに既発曲は全部聴いたことあって、新曲だけ聴きたいって方は、iTunesで新曲だけ買うこともできます。そのうちレンタルでも聴けるだろうから、その方が楽かも知れませんが。
 ただ個人的には『絶対聴いた方がいい』とお勧め出来るほど素晴らしいとは思えなかったです。アルバムしか聴いたことない人や、初めてラスアラに触れる人向けのベストアルバム(2012.2.8)






Seventh Sense 7th Album

01.BLUE BIRD SHERRY ★★★
 軽快で躍動感に満ちたオープニングナンバー。歌詞もアッパーでポジティブ。もう英語も沢山混ぜちゃってます。
 ……なんですけど、ANZAIの声が昔よりも低くなっているからか、どうも突き抜けるような爽快さに欠ける。あと今作全体の特徴なんですが、音が薄くなってるのも原因かも。『BLUE LIGHTNING』ぐらいのパワーが欲しかったです。
 演奏自体は良く、抜けのいいドラムとギターの刻みが躍動しています。間奏はもっと動いてもいいと思いますが。

02.タナトス ★★★★
 セブンスセンスといいタナトスといい、もう聖闘士星矢じゃねぇか。あっちは正確にはセブンセンシズですけど。それはさておき、中二単語をふんだんに詰め込んでます。やっぱラスアラはこうでなくちゃね!
 一応もうちょっと突っ込んでおくと、1番でミクロ視点、2番でマクロ視点、そしてそれ以降は「世界は1つ」と統合して『僕』視点でタナトスという概念と対峙するという構図がよく出来ていますね。
 演奏も地味でシンプルながら良く、ドラムのフィルやギターによる隙間の埋め方に巧みさを感じます。曲調的にはタナトスというよりエモトス。

03.ディデュディディ ★★★
 タイトルは語感重視で意味はないそうです。第七感を働かせて感じ取れってことですね。
 和風な単語を所々適当に(貶してません)散りばめた曲。メロディラインもほんのり和風。コーラスやBメロの手数が多いドラムワークが特徴的。
 しかし全体的なインパクトは薄めな印象。Aメロ〜サビ終わりまでずっと連続性があるメロディは、人によって好き嫌い別れると思います。苦手な人は息苦しく聴こえるかと。

04.灯 ★★★★
 PVも制作された、恐らく今作のリードトラックである曲。前作で言うところの『エンプティハート』的立場。
 タイトルが象徴しているように、激しさや情熱よりも、ほのかに灯る優しさから与えられる力を表現している曲です。
 曲調の割にドラムがやたら細かいですが、忙しなさは感じない。むしろメイン級の働き。
 とはいえ主役はやはりANZAIのヴォーカルで、そこに託した聴かせ方。これは正解ですね。ハイトーンながら力のある声質と相まって、見事な表現力で歌い上げています。

05.a burning bullet ★★★★
 ベストアルバムに先行収録されていた曲。ベストアルバム版との違いは「何を守る?」の部分がちょっと違うぐらい。あとミックスもわずかに違うかな?
 ベストアルバムではそこまでパッとする曲でもなかったんですが、このアルバムに入ると妙にしっくり来る不思議。
 弾丸というか、それを撃ち出す撃鉄のような楽曲です。喜怒哀楽を装填して叩き込むこの衝撃、気持ちいいです。

06.通り雨 ★★★★★
 恐らく雨音を表現しているであろう、クリーントーンギターのアルペジオを重視した、今作中でも突き抜けてポップなミディアム曲。シンバルとハットを的確に挟むのも、曲に凄く合っていますね。「そう、通り雨にはシンバルやハットが合うよね!」と、妙な同意を持たせてくれる。
 演奏は全体的に引き算でスッキリしていて、いい意味でらしくない。しかしアウトロでは何故かちょっとだけノイジーに。
 それにしてもMATSUMURAは本当に滑舌が良くなってるなと。昔の曲よりも格段に聴き取りやすいです。
 あと、サビが凄いどっかで聴いたことがあるんですけど、思い出せないのが凄くもどかしい。

07.ハローエンドグッバイ ★★★★★
 The Smashing Pumpkins『Tonight,Tonight』から明らかに影響を受けていると思われる曲。ストリングスの使い方やヴォーカルの抑えた歌い方がかなりソックリ。更にラストのコーラスは若干Base Ball Bearっぽかったりも。
 ともあれ、ラスアラの新境地とも言える爽快な曲。前曲と連携している、雨上がりの鮮やかな空を想起させる描写がとても良い。歌詞もロマンチックで綺麗、そこにノスタルジーやセンチメントを忍ばせていて実に素晴らしいです。ACIDMANが書きそうな詞をキャッチーにした感じ。ANZAIの、ちょっと声を掠れさせた優しい歌い方も曲によくハマっている。
 ちなみに、こういう曲でこそベースはビョンビョンと目立っていいと思うのですが、どうでしょう。

08.DELETE ★★★★
 2ビート+ミディアムテンポのエモ。場面毎にテンションが違うんですが、根っ子の部分が無機質で淡々としているのが面白い。諦観を表しているようで。
 歌詞は全盛期のラルクが書きそうな終末観・神への反抗思想を、ラスアラ風に書き直したような感じ。
 フェードアウトしていくアウトロでギターが泣きのフレーズを弾き倒すのも、ちょっと前の日本のロックバンドでよくあった気がします。
 この曲も主にサビメロを筆頭に、凄くどこかで聴いたことがあるような気が……

09.人間に告ぐ ★★
 タイトルから匂い立つ中二臭キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
 打ち込みみたいなドラムパターンが特徴的な曲。モダンヘヴィネスっぽいアプローチなんですけど、ギター音や歌い方が軽いからどうにもパワー不足。もっと言ってしまうと、サビ頭のパターンや裏打ちリズムも何だか軽い。
 おまけに、シリアスなテーマなんですけど「阿修羅は人間に告ぐ」が「ワシらは人間に告ぐ」に聴こえたり、「やがて荒れ地は蘇って」が「やがて俺っちは蘇って」に聴こえたり、どうも緊張感を削がれるんですよね。
 過去のアルバムぐらいの音だったらカッコ良く聴こえてたと思います。勿体無い。

10.sensation ★★
 前曲のテンションを維持して流れ込みますが、なんか突き抜けきらないのがもどかしい曲。あまりセンセーションって勢いがなく、ディデュディディから和風っぽさを抜いたような感じ。
 イントロのANZAIパートのギターがパワーコードのバッキングオンリーで面白くない。いやいつも大抵バッキングしかしないですけど、せめてこういう曲のイントロぐらいは……音圧があれば誤魔化しは効いたかもしれませんが。
 そんな中、佐野パートのギターが一人ピロピロと弾けているのが耳に残る。でも肝心のヴォーカルのパワーが……もっと叩き付けるように歌ってくれればいいのに。

11.time-lag-cloud ★★★★
 イントロがメタルっぽい。しかし間奏辺りからホイッスルが入りだし、トラッドな要素も匂わせてくる曲。ちなみにこれはTHE CHERRY COKE$のKOYAが演奏してるそうです。
「ループ」「あの日あなたを救えたら…」「未来からの訪問者」なんてキーワードが、某作品を思い出す。
 それはともかく、これは良曲。ギターのザクザク感、歌メロの立ち具合、隙間の使い方、テンポの良さ、いずれもバランスが良くてエモい。激情が要求されないので、アルバムのカラーからも外れていないし。

12.つぼみ ★★
 ストリングスをフィーチャーしたバラード。やっぱり最後はこういう決意表明系で締めるのか。妙にアコギが硬いのは、つぼみの硬さを表現しているんでしょうか。
 これも音的には今までのラスアラにはなかった楽曲ですが、それがそのまま良さに繋がっている訳でもなく。新境地というよりも普通のロックバラードなだけで、特に面白味も感じず。


●総評
 これまで彼らの作品を追ってきた人は、2ビートで疾走するメロコアやメロパンが存在しないことにまず驚くのではないでしょうか。エモでほぼ構成されています。コアはつきません。
 更に、情熱的に歌を迸らせることもなく、ギターも重さや歪みがあまりない。ドラムもド派手にブッ叩かない。ベースは……まあいつも通りか。『歌心を追求』なんてキャッチフレーズの通り、本当にポップな歌を最前線に立たせた作りです。インタビューを読むに、今作は開き直ってJ-POP路線を強化しているようです。

 そのせいか、ポップ路線に振り切った曲の方が良く聴こえました。だからこういう路線がアリかナシかと聞かれれば、アリだとは思います。元々ポップな部分も濃いバンドですから。やはりメロディセンスは素晴らしいものを持ってるかと。今作のメロディラインはなんか90年代J-POPからのデジャヴを感じるんですが、普遍性とも取れますしね。
 また、このメロディセンスのおかげで、チープさを感じずに済んでいるという面もあります。彼らはとにかくメッセージを込めるバンドなので、言葉数も自然と長めになるんですよ。
 つまり、メロディを構成する音符の数も増える。だから起伏が増して、いわゆる「サビで曲名連呼」「サビだけ作り込んでAメロBメロはぶん投げ」なんて現象が起こらない。美メロが連発できて、志向しているジャンルとの相性が抜群なんですよね。

 しかし今作のポップ化、手放しに褒められる訳でもなかったです。と言うのも、衝動を表に出して欲しいような曲まで丸くなっているので、そこが物足りなかった。
 大雑把に言うと、喜怒哀楽から『怒』が抜けてるんですよね。アレンジや詞から判断するに、これ意図的になんでしょうけど。Me and Your Borderline〜the sumぐらいの感じでやると、ちょうど良かったのではと思いました。
 あと、トーンを統一しすぎたためか、アレンジの大胆さとは裏腹に手癖のようなものが目立ちますね。ドラムがスネア連打で盛り上げたり、サビ前で一拍置くように静かにするパターンが多いです。

 総合的には、大胆さやそれに押し切られないくらいの作り込みは認めますが、やり過ぎて小粒になり気味なのが残念、といった所。初めて聴くにはあまり勧められません。他の作品を聴いてからの方がいいでしょう(2013.4.12)








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