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Mice Parade


1st Album The True Meaning of Boodleybaye 1998年 ★★★★★
2nd Album Ramda 1999年 ★★★★★
3rd Album Mokoondi 2001年 ★★★★★
Compilation Album All Roads Lead to Salzburg 2002年 ★★★★★
4th Album Obrigado Saudade 2004年 ★★★★★
5th Album Bem-Vinda Vontade 2005年 ★★★★★
6th Album Mice Parade 2007年 ★★★★★
7th Album What It Means to Be Left-Handed 2010年 ★★★★








The True Meaning of Boodleybaye 1st Album

01.A Dance By Any Other Name
02.Dasher, Prancer, Donner & Blitzen
03.Surprise! The Slippery Sled Went Down
04.In The Water There Are Islands, In The Land There Are Lakes
05.My Workday In May
06.Dub Interlude #1 (Boodley)
07.Tag
08.Headphonland: The Gangster Chapter
09.My Funny Friend Scott
10.Trudging Through The Freshly Cut Grass
11.Peeking Around The Corner
12.Purple Blather (High End Remix)
13.Shalom
14.? (It's A Joke; It's Supposed To Be Funny)


 アダム=ピアースによるソロプロジェクト、アメリカのダブ/エレクトロニカ/ポストロックバンド・マイスパレードのアルバム。
 アダムによるドラミングとキラキラ系電子音を融合させた、ポストロックとエレクトロニカの中間のようなファジーさが、当作品の基本的なスタイル。ドラムは変拍子やフィルを駆使し、余計な音を鳴らさずに的確な打撃を重ねてきて、単純に上手いの一言で片付いてしまいます(笑)電子音も、やたらめったら音を重ねずちゃんと引き算を心得えてますし、ノイズ・轟音系とのコントラストも良いですし、ループも効果的ですし、実に心地良く聴けます。
 そしてそれだけに終わらないのが、当作品の素晴らしい所。かなり実験的なんですよね。#12ではドラムンベースをやりながら金属同士をぶつけたような音を分離して鳴らし、更に色々エディットしてますし、#13はエレクトロニカなトラックにダブコーラスを乗せてちょっと変わった歌物に仕上げてます。ラストの#14は、実験的とはちょっと違いますが、全てのパートをヴォーカルで歌うアカペラ形式になっていて、何故か聴いていて心がほっとするんですよ。
 個人的に特に気に入ったのが#8。ドラムとビブラフォンっぽいキラキラ音がちょうど、ポストロックとエレクトロニカの中間地点に楽曲を位置付けておきつつ、ちゃんとタイトルにあるようにギャングスタラップの要素も入っているという。素晴らしいとしか言いようがありません。
 ちょっととっつきにくい音楽かも知れませんが、緻密に組み立てられた音楽が好きな方はきっと気に入るはず。技術もセンスも超一級品です。器用を通り越して万能という言葉が相応しい。天才が努力研鑽して洗練されているが如き立ち振る舞い(2013.6.3)






Ramda 2nd Album

01.Ramda Flies With Magic Eyes
02.Distant
03.Galileo
04.The Good Red Road
05.Warpshire
06.Gulliver's Travels
07.The Lonely Lounge Piano Player's Lost His Little World
08.The One To Look For
09.(Attempt)
10.More Music For Mallets Voices & Organ (And Other Stuff)
11.Logic (Parts 1 & 2)
12.Headphoneland In The School Of Old
13.Imagine Winooski
14.Ramda's Untriumphant Return
15.Logic (Part 3)


 1stより実験的な部分が控えめになった代わりに、よりメロディを聴かせる構造になっています。#2では和風メロディを織り込んだり、#3では重ねられたギターが夜空に見える銀河のような美しさを奏でたり、#7は流麗に躍っるジャズだったり、#10ではファンタジックなメロディとフラメンコギターが交錯して独特の世界を形成したり、#13ではアカペラとリズム楽器を混成させてみせたり(厳密にはアカペラじゃありませんが)、多種多彩な表現を楽しめます。ノイズや強烈なフィードバック音ですら、美しい旋律として聴かせてしまう徹底ぶり。
 つまり、主旋律を担うパートがヴォーカルやギターといった部分に限定されておらず、フレキシブルに移行しているということ。誰でも主役になりうる、または多角的な視点から描かれる、群像劇のような音と言えるでしょう。
 そんなアンサンブルの性質上、歌謡曲やバロックのようにベッタベタなクサメロではありませんが、繊細で緻密なメロディを1時間以上楽しむことができます。
 メロディ楽器以外の部分も、変わらず素晴らしいですね。#1ではパーカッションを用いていますが、音にムラがなく非常に綺麗なんですよ。やはり並々ならぬ技術の持ち主である。
 #11・15はこのバンドの良さをダイジェストでつまめる美味しい曲で、忙しい時・音楽聴ける時間が短い時はこの2曲を再生するのがいいでしょう(笑)無論、全部通して聴くに越したことはないんですけどね。
 普段、メロディ中心にヒット曲を多く聴く方も、たまにはこういうバンドに手を出してみるのもちょっと面白いかもしれませんよ(2013.6.4)





Mokoondi 3rd Album

01.open air dance(part 1)
02.open air dance(part 2)
03.open air dance(part 3)
04.into the freedom world(part 1)
05.into the freedom world(part 2)
06.into the freedom world(part 3)
07.circle 1
08.pursuant to the vibe
09.mokoondi
10.ramda's focus
11.circle 2
12.the castaway team
13.man on the beach in brasil


 3部作を2つも配するという構成が斬新にして大胆。
 しかし、カロリーオーバーな胃もたれ感はありません。今作の特徴は都会的でモダンな、洗練されたイメージ。もちろんドラムやビブラフォンを筆頭としたキラキラ系の音はそのままに、今回はクラシックギターをメインとし、まさしくアートワークスのように、高層ビル群を青がかった色で俯瞰して見るような軽やかさ、美しさを脳内へと投射させてくれます。
 そんな雰囲気ならば、彼らがこれまでの作品にも取り入れていたジャズも合うのは論を待ちませんよね。時折挿入されるジャズがホットにクールに、ビルの谷間に風を吹き込んで彩ってくれます。
 ……そして、ここで終わらないのがマイスパレードの天才的な所。仕上げと言わんばかりに、更にスパニッシュな要素をも取り入れてるんですよ! これがホントによく今作の雰囲気にマッチしてるんですね。最後は波音をバックに、ポルトガル語っぽい言語で歌う男性の曲で締めるのも、情緒があってよろしい。決して無機質ではなく、人の温かみが含まれたバンドだということを伝えてくれます。
 3rd〜5th辺りのACIDMANのインスト曲が好きな人は、何かしら引っかかるものを感じるはず。ACIDMANはここまで細かいフレーズをやらないけど(2013.6.5)






All Roads Lead to Salzburg Compilation Album

01.Circle 1 (BBC Session)
02.Phasen Weise
03.Freedom World Excerpt
04.All Roads Lead To Salzburg (BBC Session)
05.One Road Led To Columbia
06.The Levitation (Open Air Dance Part 4) (Live From Curtain Theatre, London)
07.Dub Interlude #2 (Live From Club Que, Tokyo)
08.Open Air Dance (BBC Session) Part 1
09.Open Air Dance (BBC Session) Parts 2 & 3
10.Open Air Dance (BBC Session) Part 4
11.Circle 2


 恐らく新規曲を交えつつのライブ盤みたいな位置付けになるのでしょう。
 うん、ありえないです。と言うのも、ライブ/セッションテイクと音源物におけるクオリティの違いがないから。メンバーが実はサイボーグでしたと言われても全然驚きませんよ僕は。
 勿論アレンジは異なりますが。パッと聴き、似ているようで全然違います。良くなったとかそういう話じゃなく、元々素晴らしい物を別解釈してもやっぱり良い物だし、元の骨組み的な部分の良さも再確認できた感じ。単純に、音符の配置一つ一つが芸術的に美しいんだなと。
 これ、実際に同じ空間にて生で聴いてたら、息をすることすら忘れてしまいそう。それでも至福の感覚に包まれて恍惚となっちゃいそう。それくらい引き込まれる音楽です。北斗神拳奥義・北斗有情破顔拳を食らった気分。「ちにゃ!」とか言っちゃいますか(2013.6.6)






Obrigado Saudade 4th Album

01.Two, Three, Fall
02.Mystery Brethren
03.Focus On The Roller Coaster
04.And Still It Sits In Front Of You
05.Wave Greeting
06.Here Today
07.Milton Road
08.Spain
09.Out Of The Freedom World
10.Guitars For Plants
11.Refrain Tomorrow


 少しだけ、歌を意識した作品となっております。とは言いましてもそこはマイスパレード、やはり主旋律をそこに丸投げするのではなく、あくまでメロディを構成する一つのパーツとしての使い方をしております。
 いい使い方してるなーと思いますね。特に#1や#8では、囁くようにキュートな歌唱が繊細な楽曲とよくマッチしていますし。もちろん男声の方も、相変わらず落ち着いた響きで安心をもたらしてくれます。
 全体的にちょっと分かりやすくなってる感がありますが、これはいい変化だと言えるでしょう。ずっと同じような楽曲だと飽きてしまいますし、マイスパレードならではのアイデンティティは一切損なわれていませんし。これも傑作と言ってしまっていいでしょう(2013.6.7)






Bem-Vinda Vontade 5th Album

01.Warm Hand In Farmland
02.Nights Wave
03.Passing & Galloping
04.The Days Before Fiction
05.Steady As She Goes
06.Waterslide
07.The Boat Room
08.Ground As Cold As Common
09.Ende


 一層、歌モノ化が進んだアルバムです。
 ベネ(良し)!とってもベネ(良し)だッ! #2のクリスティーンヴォイスで蕩け癒されなければ、一体他の何に癒されろと言うのだッ! #4も男女デュエットが、ちょっとフレンチポップスみたいで心地良いです。バックの演奏はもちろんマイスパレード節なんですけどね。後半は歌が消え、圧倒的な演奏技術で魅了してくれます。
 そして#8では日本のバンド・クラムボンの原田郁子がヴォーカルでゲスト参加しています。クラムボンが好きな人は必聴。
 考えてみれば、複数の音色を統率して美しいメロディを創り出せるような人間が、歌メロを創れない訳がないんですよね。素晴らしい。やっぱり手放しで褒めるしかない名盤です。
 トータルタイムも約45分と、これまでの作品に比べて短いですし、とっつきやすい一枚と言えるでしょう(2013.6.8)






Mice Parade 6th Album

01.Sneaky Red
02.Tales Of Las Negras
03.The Last Ten Homes
04.Snow
05.Double Dolphins On the Nickel
06.Satchelaise
07.Swing
08.Circle None
09.The Nights After Fiction


 歌モノポストロックへと完全変身を遂げた、セルフタイトルアルバム。toeが好きな人とかはシュピーン!と来るでしょう、この音楽性。
 なーんて書きましたが、前作から大きく変化した訳でもありません。あくまで前作を踏まえつつの歌モノ化です。
 歌メロ自体は割と普通というか、一筋縄ではいかない変則性を有している訳でもなく、心地よさ優先といった所でしょうか。それでも楽器との絡ませ方のこだわりなどは半端じゃありませんけど。#6なんて、アコギストロークと歌ををここまで緻密に組み合わせられるのかと、誇張抜きで驚愕しました。
 35分と更にコンパクトになってますし、セルフタイトルですし、ディスコグラフィ中一二を争うぐらい聴きやすいですし、入門編にこれを勧めたい所ですが……個人的にはトップバッターとして推奨できません。
 何故なら、インスト部分の旨味をこのアルバムでは最大限味わえないから。やっぱり初期の作品を聴いてからにして頂きたいですね(2013.6.9)






What It Means to Be Left-Handed 7th Album

01.Kupanda
02.In Between Times
03.Do Your Eyes See Sparkles
04.Couches & Carpets
05.Pond
06.Recover
07.Old Hat
08.Mallo Cup
09.Remember The Magic Carpet
10.Even
11.Tokyo Late Night
12.Fortune Of Folly
13.Mary Anne


 パーカッション、スパニッシュギターと、これまでに使ってきた楽器を惜しみなく使い、ジャンル的にもエレクトロニカ、ポストロック、シューゲイザー等々、これまでにやってきたことを継続してますが……益々一般化されつつある気が。ここまで来ると、もうあまりポストロックやエレクトロニカらしさは薄れている気すらしますね。
 とはいえ、音の温かみが一気に増して、これはこれで心地良いのも事実。まるで木漏れ日の中でリラックスしているかのような安息をもたらしてくれるのです。#6〜#8の流れにおける、ポップで軽快な空気の中からもたらされる温もりや熱気は、人の心の純粋な部分を揺さぶってしまうほどに鮮烈。
 聴き応えはありますし、クオリティは変わらず高いままですけど、なんか自分の中で求めてるマイスパレードとはちょっと違っている感が。もちろん、今作の方向性が間違いだなんてことは言いませんけどね。ただ、ポストロックを普段聴かない人への架け橋になるかどうかといえば、ちょっと違うかなと思っただけで(2013.6.10)







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