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坂本真綾



1st Album グレープフルーツ 1997年 ★★★★
2nd Album DIVE 1998年 ★★★★★
1st Single Collection Album シングルコレクション+ハチポチ 1999年 ★★★★
3rd Album Lucy 2001年 ★★★★
1st Mini Album イージーリスニング 2001年 ★★★★
2nd Single Collection Album シングルコレクション+ニコパチ 2003年 ★★★★★
4th Album 少年アリス 2003年 ★★★★★
5th Album 夕凪LOOP 2005年 ★★★
2nd Mini Album 30minutes night flight 2007年 ★★★★★
6th Album かぜよみ 2009年 ★★★★
7th Album You can't catch me 2011年 ★★★★








グレープフルーツ 1st Album

01.Feel Myself
02.I and I
03.グレープフルーツ
04.右ほっぺのニキビ
05.ポケットを空にして
06.オレンジ色とゆびきり
07.青い瞳(REMIX)
08.約束はいらない
09.MY BEST FRIEND
10.風が吹く日(Ma-aya version)
11.そのままでいいんだ


 菅野よう子プロデュースにて送り出された声優界の歌姫が一人、坂本真綾の1作目。
 リリース当時は17歳という若さからくる未発達さゆえか、技術的にはまだまだ完成形には遠いですが、変に崩したり気取ったりしない、混じりっ気のない歌声は透明な声質と相まってとてもいい。素直にダイレクトに、聴き手に伝わってくるんですね。
 それが良く現れているのが#9。英詞なんですが、発音がどうとか以前に声をナチュラルな楽器として使えているので、凄く聴き心地がよい。
 そんな歌を密やかにサポートしながら演出する、97年のリリースながら今聴いても古臭さを感じさせないエイジレスなアレンジの楽曲群。ジャケットはともかくとして(爆)
 スッキリとまとめつつも細部まで気配りされた曲を用意してくる辺りは、流石は菅野よう子といった所でしょうか。ゆったりした曲が多めなので、アニメのOP曲のようなアップテンポものが好きな人には不向き。
 歌詞は、岩里祐穂と本人が大体6:4くらいの割合で作詞しています。この時点ではまだ、岩里さんの作詞能力に依存してる印象が強いですね。世界観の出し方という点では。思春期特有の迷いだとか、厭世観だとかもやっぱり岩里さんの方が上手く書けてる感じがするんですよ。本人作詞の、ぶりっ子かましてるアイドルポップスみたいな#4とかは苦笑いもんだし(爆)
「『豊かさが君たちをダメにする』なんて知ったこっちゃない」「みだらな気持ちぶらさげて」と、妙にシニカルで生々しい#5が特に良かった。
 瑞々しさを感じさせながらもどこか達観した雰囲気を持っている一枚。正にグレープフルーツのような甘酸っぱさが染み渡るアルバムでした(2011.3.9)







DIVE 2nd Album

01.I.D.
02.走る(アルバム・ヴァージョン)
03.Baby Face
04.月曜の朝
05.パイロット
06.Heavenly Blue
07.ピース
08.ユッカ
09.ねこといぬ
10.孤独
11.DIVE


 2作目にして、坂本真綾の作詞センスが一気に開花した印象を受けました。感性を他者に伝達する表現を獲得し、存分に思いの丈を振り回しております。聴いて思ったことは、彼女に必要だったのは、難解な比喩や豊富な語彙ではなかったんだなと。
 岩里祐穂の詞も変わらず素晴らしいです。どの詞もいい。テーマ的には別に斬新でもないんですが、二人揃って『ありふれない愛の歌』というキャッチフレーズがしっくり来る。難解さや技巧に走らずとも、これだけ心に浸透していくラブソングって書けるんだなと。こういうのなら自分でも受け入れられますね。
 楽曲面も素晴らしい。抜群に上手いストリングスとアコギ、コーラスの使い方で疾走感を描き出す#2、月曜日の憂鬱を歪んだ音色で表現してみせた#4、ローファイ気味なファンク#7、深海の暗闇と美しさを同時に描いてみせた#11が特に良かった。
 これは万人受けもするだろうし、凄いお勧めです。声優だからとかそんな下らん色眼鏡は今すぐ踏み潰して粉々にしろ! 最高のラブポップスアルバム(2011.3.10)







シングルコレクション+ハチポチ 1st Single Collection Album

01.約束はいらない
02.ともだち
03.ボクらの歴史
04.Gift
05.君に会いにいこう
06.光の中へ
07.Light of love
08.奇跡の海
09.Active Heart
10.パイロット
11.プラチナ
12.24(twenty-four)
13.恋人について
14.ポケットを空にして
15.CALL YOUR NAME


 オリジナルアルバムにあまりシングル曲が収録されていない+シングルの寄せ集めでもとっ散らかった感がなくまとまっている=一枚のオリジナルアルバムと遜色なく聴くことができる。同作品でまとまっている、ということを差し引いてもこのまとまり具合はいいですね。
 主題歌メインという事情からか、ほとんどの詞は提供物。変わらず坂本真綾らしいというか、いい詞を書いてくれてるから全く問題ありません。
 美しい旋律の中にエスニック+カオスが混じる#1、転調を交えての大サビがいいアクセントとして機能しているミディアムバラード#2、楽器的な歌の使い方・コーラスワークなど菅野よう子のソングメイキング能力を駆使した美旋律に酔いしれてしまう#6・7・8、そしてグレープフルーツの感想でも書いた#14、この辺りが特に気に入ってます(2011.3.11)







Lucy 3rd Album

01.Lucy
02.マメシバ
03.ストロボの空
04.アルカロイド
05.紅茶
06.木登りと赤いスカート
07.Life is good
08.Honey bunny
09.Tシャツ
10.空気と星
11.Rule〜色褪せない日々
12.私は丘の上から花瓶を投げる


 前作で手応えをつかんだのか、今作辺りから自身の作詞曲が増えてきた印象を受ける3枚目。
 いい感じですね。日常的な場面設定に彼女独自の感性を加えた言葉で紡ぐ愛の歌。それかファニーな舞台を持ち出すか。これは岩里祐穂の役割ですが。
 20代を迎えたこともあってか、作風に若干の変化が見えてますね。例えば、ある意味ヤンデレと紙一重なアクティブ系献身女子みたいな歌詞の#2。こういうのはヲタ受けが良さそうだな。
 そしてアダルトな空気を少し匂わせる#8。しかしこれは違うな。性的な匂いを全く感じさせないので物足りない。この人恋愛とセックスは完全に切り離してるタイプなんでしょうか。なんか根っこの部分でプラトニックな価値観が見えるというか。歌詞だけ見てると。本人の歌もこの手のタイプには向いていない。色気不足。
 それ以外では、英詞の#7ではやっぱり聴き心地の良さを提供してくれるし、確かな成長も感じさせてくれる。音の方はというと、前作まではストリングスが目立ってましたが、今作はアコギが主役となっております。やっぱりブレることなく、まるで安打量産機の如く安定して良曲を生産し続ける。ま、菅野さんだもんね。
 何だろう、菅野よう子をはじめとして周りの人々に順当に育てられてるなというのが伝わってくるような一枚ですね。ここまでの作品から通して聴いてみると(2011.3.12)







イージーリスニング 1st Mini Album

01.inori
02.blind summer fish
03.doreddo 39
04.afternoon repose
05.bitter sweet
06.another grey day in the big blue world
07.birds


 イージーリスニングと冠しているだけあって、全体的には聴き流すBGMとしても使えそうな雰囲気物の曲が多いです。元々こういう系統を得意としているだけあり、いい仕上がりでは。特に#6は本当に綺麗で、聴いていて眠気を誘うくらい。
 しかし中には例外もあり、#3のようにエキゾチックさを交えつつカオスな音配置をした曲があって、それがいいアクセントになってます。
 充実したミニアルバムでは。初心者の人はここから入るもよし、まだ聴いてないってリスナーがこれを聴いてみても損はないです(2011.3.16)







シングルコレクション+ニコパチ 2nd Single Collection Album

01.夜明けのオクターブ
02.ヘミソフィア
03.ダニエル
04.バイク
05.しっぽのうた
06.指輪
07.音楽
08.みどりのはね
09.シマシマ
10.キミドリ
11.tune the rainbow
12.Toto
13.Here
14.ベクトル
15.THE GARDEN OF EVERYTHING 〜電気ロケットに君を連れて〜
16.gravity


 基本構成はハチポチと同じ。
 しかし楽曲面ではかなりの変化が見られるようになりました。#2のように打ち込みを積極的に盛り込んだり、時に平行に、時に交錯するベースとストリングスを対比させる手法を取った#4のような曲もあったり。良曲ですね。あと当然ですが、歌唱面でも成長を確認できます。
 他にもほのぼのしているようでシニカル、かつ言葉遊びを重視した#1、コーラスで遊びを見せる#5などもあり。また本人作詞の#9・10は、近年のバンプが好きな人に受けが良さそう。声優シンガーとしてはトップレベルの作詞能力ですね。これで作曲も出来れば言うことないんですが。
 逆にエセ鬼束ちひろみたいな#16はどうにも受け付けなかった(爆)こういう使い方は彼女にあまり合ってないと思う(2011.3.17)







少年アリス 4th Album

01.うちゅうひこうしのうた
02.ソラヲミロ
03.スクラップ〜別れの詩
04.まきばアリス!
05.真昼が雪
06.KINGFISHER GIRL(The Song of "Wish You Were Here")
07.ヒーロー
08.夜
09.CALL TO ME
10.光あれ
11.ちびっこフォーク
12.park amsterdam(the whole story)
13.03
14.おきてがみ


 あどけなさを残しながらも気高い空気感に加え、ストーリー性が増した歌詞。正に『少年アリス』という物語を体験しているかのような錯覚に陥ります。ポップスなのにストイックで、北欧ポップスに通じるものがありますね。
 今作は菅野よう子が坂本真綾に課した卒業試験に聴こえてきます(今作を以って全面プロデュースから離れている)初期の歌唱力だったら歌いこなせていないであろう曲をバシバシ作ってる気がするんですよ。単にキーが高めとかそういうのでなく、表現力などの部分で。
 肝心の歌ですが、きっちり応えているかと。自身も菅野さんも、歌声の心地良い聴かせ方を分かってるというか。おなじみの英詞曲#6を取っても、相当な成長を見せているし。そして今回はプロダクションに相当こだわっていて、特にリバーブやハモリでの加工がとても美しい。そして時折混ぜてくるえげつない転調による場面変更がまた上手い。
 正に夢の中といった整合性のない描写と菅野節(岡崎律子っぽくもある)が見事にマッチした#1から旅立ちの後を描いた#14まで、どの曲も素晴らしいです。曲ごとの繋がりは薄いのに、一つの物語として成立してて、胸に何ともいえない切なさが込み上げてくる。個人的にはこれが彼女の最高傑作(2011.3.19)







夕凪LOOP 5th Album

01.Hello
02.ハニー・カム
03.ループ
04.若葉
05.パプリカ
06.My Favorite Books
07.月と走りながら
08.NO FEAR / あいすること
09.ユニゾン
10.冬ですか
11.夕凪LOOP
12.a happy ending


 5枚目にして遂に菅野よう子から巣立ち、様々なライターからの曲提供を受けるようになった。とはいえ、大きく音楽性が変化したということもないですね。洋ポップス→安っぽさを抜いたJ-POP寄りになったぐらいで。
 しかぁぁぁぁぁし!! あまり違和感なく聴ける半面、新鮮さは薄いかも。別に熱狂的な菅野ファンではありませんが、やはり菅野よう子の方が彼女の魅力を引き出すのが上手い。
 でも最後の曲は良かった。はっきり言って綺麗事丸出しだし、それに伴う困難の描写に乏しいなど突っ込み所は多々あるんですが、何故か鈴木祥子の上品なサウンドメイク+彼女の歌声だと許せてしまう(笑)1曲の中に物語が完璧に確立されている#9もいいですね。
 DIVEや少年アリスより、グレープフルーツが好きなリスナー向け。個人的には悪くなかったんですけど、ちょいと首を傾げたくなる内容でした。あまりにクセが無さ過ぎたので(2011.3.20)







30minutes night flight 2nd Mini Album

01.30minutes night flight
02.ドリーミング
03.記憶 - there's no end
04.僕たちが恋をする理由
05.セツナ
06.ユニバース
07.30minutes night flight 〜sound of a new day


 2枚目のミニアルバム。どの曲も『夜空』がテーマになっており、その中に優しさと柔らかさ、冷たさと孤独、空想と現実、様々な要素が内包されている構造。
 四つ打ちを効果的に使用して上昇感を描く#1、日中の緩やかで心地よいまどろみを想起させるポップチューン#2のように、曲もそれに準じた、夜間にしっとりと聴ける丁寧な作り。
 しかし、#6は壮大なスケール感はいいんですけど、ブレス処理の雑さが現実に引き戻されるようで気になっちゃうのが難点。
「眠れない夜を過ごしたことがある、すべての人へ。30分間の夜間飛行」というキャッチフレーズが本当にピッタリです。ここで言う眠れない夜っていうのは、不眠症とかそういうのではなく思慕から来る物ですが。
 そんな相手がいなくても、寝る前や眠れない時に聴くのには最適な癒しの一枚。やはりこういうプラトニック路線だと強いね(2011.3.21)







かぜよみ 6th Album

01.Vento
02.トライアングラー
03.風待ちジェット 〜kazeyomi edition
04.Remedy
05.雨が降る
06.Get No Satisfaction!
07.蒼のエーテル
08.失恋カフェ
09.SONIC BOOM
10.ピーナッツ
11.さいごの果実
12.Color
13.カザミドリ
14.ギター弾きになりたいな


 特に大きく方向性が変わった訳ではないのに、今までの作品とはまた違った新鮮な感覚。珍しくアッパーで開放的なストリングスロック#6なんか、ある意味で新境地じゃないでしょうか。
 彼女自身の声も実に心地良くマッチ。導入の#1はエスペラント語というチョイスも相まって聴き手を音の風に浸す錯覚に陥らせるし、#4でははまりの良いメロが柔らかく過去の傷を癒してくれる。クライマックスで切ない感情を溢れ出させる(爆発ではない)#8もキュンと来る物が(笑)
 ちゃんと必要な分だけのエレメンツだけで組み上げられている印象の、極めて無駄の少ないアルバム。心洗わせて頂きました。しかし#2は思い切って省いても良かったような。このアルバムに入れるには尖りすぎていて、浮いている状況に(2010.1.1、2011.3.9少しだけ改稿)







You can't catch me 7th Album

01.eternal return
02.秘密
03.DOWN TOWN
04.美しい人
05.キミノセイ
06.ゼロとイチ
07.みずうみ
08.stand up,girls!
09.ミライ地図
10.ムーンライト(または"きみが眠るための音楽")
11.手紙
12.トピア


 7thアルバム。今作も様々なアーティストやライターが曲提供をしています。
 テクノポップや最近のアニソンで大流行してるような、派手なストリングスロックに傾くなどの方向転換はなく、今までのディスコグラフィーに沿った内容。新鮮さはありませんが、ピアノやストリングス、ホーンを積極的に用いて軽快かつ上品、時にしっとりとした音空間。それに乗る、シニカルだけどピュアで救いがある詞世界。とりあえずガッカリした、ってことはないでしょう。
 前作同様、今作も菅野よう子作の曲がありますが(#4)、他の提供者は彼女を『歌わせる』傾向があるのに対して、この人は『声を楽器的に響かせる』ことを重視している節があることを再確認。「私が真綾を一番上手く使えるんだ!」と言わんばかりの把握っぷり。
 勿論歌わせることが悪い訳ではありません。可能性を伸ばす意味でも、ガンガンチャレンジさせることには賛成です。シュガーベイブの曲をジャジーにアレンジした#3も上手く対応できてますし。アレンジが歌に合わせている、というのを差し引いても。
 提供詞が物足りないということはないし、むしろ良くここまで親和できてるなと思うんですが、次回作は全曲本人作詞でやってくれないかなー(2011.3.18)







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