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椎名林檎



1st Album 無罪モラトリアム 1999年 ★★★★★
2nd Album 勝訴ストリップ 2000年 ★★★★
3rd Album 加爾基 精液 栗ノ花 2003年 ★★★★★
4th Album 三文ゴシップ 2009年 ★★★★★








無罪モラトリアム 1st Album

01.正しい街
02.歌舞伎町の女王
03.丸の内サディスティック
04.幸福論(悦楽編)
05.茜さす帰路照らされど…
06.シドと白昼夢
07.積木遊び
08.ここでキスして。
09.同じ夜
10.警告
11.モルヒネ


 音だけ切り取って聴くと割と普通なグランジサウンド。
 しかしそこに昭和歌謡ライクなメロディと『此処』『成った』など漢字を多用しつつ日本語の良さを存分に活かした歌詞、そして彼女の巻き舌気味の歌声が乗っかればあら不思議、唯一無二の椎名林檎サウンドへと早変わり。
 自分はリアルタイムでハマっていた訳ではないから、歌詞の詳細な分析などはディープなファンの方々に任せるとして、自分がまず気に留まった所。
 言葉遊びから哲学的な深みを有する変幻自在の歌詞、下世話なエロさを出さずとも色気を表現できるセックスアピール力、そしてジャズなどの他ジャンルも柔軟に馴染ませる所。この三点がホント上手いと感じました。そりゃ人気出ますよね。安易なフォロワーが影さえ踏めなかったのも納得。
 アルバム曲と比較すると、シングル曲は彼女の持ち味を残そうとしながらも『売れそうに』手を加えているのが見受けられますね。そこにちょっと違和感が。完璧に奔放な音が聴きたかったな。
 どの曲もよく作り込まれてますが、#2は個人的に別格。文句なしの名曲です(2011.5.22)







勝訴ストリップ 2nd Album

01.虚言症
02.浴室
03.弁解ドビュッシー
04.ギブス
05.闇に降る雨
06.アイデンティティ
07.罪と罰
08.ストイシズム
09.月に負け犬
10.サカナ
11.病床パブリック
12.本能
13.依存症


 音楽的本能を解放してきた印象の2枚目。収録時間が55分55秒だったり、曲名一覧を並べるとシンメトリーになってたりと、音とあまり関係のない部分にまでこだわってます。
 楽曲的には、四つ打ちを用いた#2、半ば人間アンサンブルの様相を呈したお遊び曲の#8など、グランジ色の強かった前作とは異なり様々な実験的要素を盛り込んでます。またストリングスを多用してますが、美メロのためでなく不安や焦燥を掻き立てるための使い方。更にベースが、時として少し過剰に聴こえるくらいブンブンと唸ってます。
 ストレートに訴えるだけじゃ足りなくなったんですかね。Wiki等の解説を読む限り、今作は前作よりも強く、当時の彼女の心情や状況を赤裸々に綴っている感じを受けました。前作のような刺々しさを有するサウンドの楽曲も幾つか用意されてはいますが。
 この実験的な要素を受け入れられるがどうかがポイントですかね。バンドサウンド重視派は無罪モラトリアムを聴いた方がいい(2011.5.26)







加爾基 精液 栗ノ花 3rd Album

01.宗教
02.ドツペルゲンガー
03.迷彩
04.おだいじに
05.やつつけ仕事
06.茎
07.とりこし苦労
08.おこのみで
09.意識
10.ポルターガイスト
11.葬列


 従来のようにジャズや演歌チックな要素も残しつつも、遂にバンドサウンドをほぼ捨ててきた3枚目。オーケストラ系の楽器を多用してるのが特徴。
 それだけでなく、シタールなどの民族楽器や電子音を用いたりと、総体的には相当カオス+サイコで一筋縄ではいかない。半端に掛け合わせているのでなく、昭和歌謡をベースとしながらも上記のサウンドを細胞レベルで血肉とし、合わさっている所は流石。特に#11は皆とりあえず一度は聴いてみることを強く勧めたくなるくらい圧倒されました。
 タイトルや収録時間も相変わらずシンメトリーですが、今回は使用楽器までシンメトリー。そして歌詞表記が旧字体などを用いているので読み辛い(笑)
 完全に彼女の世界ですねこりゃ。やりたい放題。官能性と憂いに磨きをかけた歌唱も、『女』を余す所なく表現。
 個人的にはこれが現時点での最高傑作かな。確実に賛否両論物ですけど。Radioheadにもちょっと通じる物を感じたので、そっち系統が好きならお勧め(2011.5.28)







三文ゴシップ 4th Album

01.流行
02.労働者
03.密偵物語
04.0地点から
05.カリソメ乙女
06.都合のいい身体
07.旬
08.二人ぼっち時間
09.マヤカシ優男
10.尖った手口
11.色恋沙汰
12.凡才肌
13.余興
14.丸の内サディスティック (EXPO Ver.)


 ビッグバンドやスウィングジャズ系の曲で固め打ちしてきた、東京事変の活動などを経て長いスパンを取っての4枚目。
 相変わらず曲の練り込みが半端ないです。でもジャンルの性質上、加爾基よりは取っ付きやすい。アコーディオン一本で情念たっぷりに歌い上げる#12も、ドロドロだけど結構聴きやすかったし。#1・10ではゲストでMummy-Dが参加してますが、個人的にこれはいらなかったな(笑)
 メロの根幹もブレず、彼女のアイデンティティは健在。彼女に対しこういう褒め方していいのか分からんけど。
 前作までの椎名林檎に固執しなければ、良作として聴くことが出来るでしょう(2011.5.29少し改稿)







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