トップページ音楽感想
Syrup16g



1st Album coup d'Etat 2002年 ★★★★★
2nd Album Delayed 2002年 ★★★★★
3rd Album HELL SEE 2003年 ★★★★
4th Album Mouse to Mouse 2004年 ★★★★★
5th Album Syrup16g 2008年 ★★★★★








coup d'Etat 1st Album

01.My Love's Sold
02.神のカルマ
03.生きたいよ
04.手首
05.遊体離脱
06.virgin suicide
07.天才
08.ソドシラソ
09.バリで死す
10.ハピネス
11.coup d'Etat
12.空をなくす
13.汚れたいだけ


 2008年に惜しくも解散してしまったバンド・Syrup16gのメジャー1stアルバム。ちなみにアルバム名の読みは『クーデター』。
 このバンドの武器は何だろうと考えた時、真っ先に浮かんだのが歌詞でした。語感や語呂を意識した言葉遊びを多く配しながらも、ストレートで切れ味鋭いメッセージ性を有するのが特徴。一発目の出だしから「愛されたいなんて言う名の幻想を消去して 沈むよ嵐の船」ですからね。
 他にもノスタルジーを生ゴミ呼ばわりしたり、働いてない人間に強烈な言葉を浴びせたり、「何かを悟ってそうな事を言え」とか、塾から帰るガキのでかい態度に殺意すら覚えたり、ザラついた歌声で鬱屈した感情をぶちまけ放題。
 外部だけではなく、批判的な牙を自分にも向けているのが特徴。#5でも言ってるように、考えすぎるタイプなんでしょうねきっと。音楽やってなかったらどうなってたんだろうと、余計なお世話ですが考えてしまった。そんな自分もある意味考えすぎるタイプ。
 この手のバンドは何故か歌詞を重視すると音が脆弱になりがちですが、彼らは違う。サウンド面もレベルが高いです。ギターの冷たくギラギラした音作りやコードの使い方に邦楽離れしたセンスを感じるし、演奏技術も高い。よく聴くと細かいフィル挟んでたり、絶妙なラインでベースラインが音の隙間を縫ってたり。これだけの能力を有するバンドなので、シンプルなインスト曲も飽きずに聴ける。
 徐々に諦めが激情に変わっていく#1、静かに狂う#4、ソリッドなアンサンブルが持ち味の#12辺りが特に素晴らしい曲。
 非常に洗練されてはいますが、好き嫌いがはっきり別れるバンドだと思います。ミスチルのダークな面が好きな人とか、案外ハマるかも。
 僕個人としては、物凄い作品だと思います。欠点らしい欠点を見つけられなかった。それくらいのレベル(2012.8.17)






Delayed 2nd Album

01.センチメンタル
02.Everything is wonderful
03.Reborn
04.水色の風
05.Anything for today
06.サイケデリック後遺症
07.キミのかほり
08.Are you hollow?
09.落堕
10.愛と理非道


 前作からわずか3ヵ月後にリリースされたアルバム。
 尖った激しさを備えていた前作とは異なり、通してダウナーでメロウな空気。アコースティックな音色が目立っていたり、ピアノやストリングスといった外部音も入っています。
 それも手伝ってか前作ほど歌詞がザクザク刺さってくる、ということはありませんでした。表現自体も前作のようにペッペと吐き捨てるような言い草は減ってるんですが。
 これはこれでアリですね。代わりに綺麗な風景描写を見せるようになったり、#5のイントロのように異国の匂いを感じさせたり、#9ではクールで切れ味のあるノリを生み出して見せたり、似通っているようでむしろ細かい引き出しの多さを披露している感覚。
 この作品は、聴いていてあんまり暗くなるような音楽じゃないですね。うっとりと身を浸したくはなるけど、悲劇の主人公になれそうでならせてくれない作品。
 激しさは薄いけど、随所にロックなカッコ良さを聴かせてくれるし、これもお勧めです(2012.8.18)







HELL SEE 3rd Album

01.イエロウ
02.不眠症
03.Hell-See
04.末期症状
05.ローラーメット
06.I'm 劣性
07.(This is not just)Song for me
08.月になって
09.ex.人間
10.正常
11.もったいない
12.Everseen
13.シーツ
14.吐く血
15.パレード


 全体的にギター音が滑らかになって、よりギターロックに近い感じに。変則性や遊びは健在だから、面白いままではあるんですけど、『coup d'Etat』の質感が最高だと信じてやまない自分にはちょっと残念。
 にしても、前述した変則性や遊び、これらを入れてくるタイミングが本当に絶妙。歌や歌詞中心で行くのかと思わせときや、急にノイジーなギターを挟んできたりだとか、がらっとフレージング自体を変えてきたり、立体的なアンサンブルでは場面場面で主導権を入れ替えたり、とにかく飽きさせないんですね。
 それと同時に、同じコードとパターンで引っ張る曲もこなしたり。何気に変幻自在の演奏。他にも今作の特徴として、#5のようにオールドスクールなロックをやったり(しかも歌詞は昔のロックスターへの皮肉)、#7・8では柔らかい曲もやったり、#9ではバンプっぽくなったり、面白いですね。
 歌詞の傾向としては、『coup d'Etat』と『Delayed』を足して割ったような感じです。後半になると思考を放棄したかのように、一定の単語を連呼する展開も多いです。手抜きなのかどうかは定かではありませんが。
 15曲で約66分と長いので、人によっては飽きてしまうかも知れません。ダウナーな曲が多いし。細かい演奏の妙に愉悦を見出せないと厳しいかも(2012.8.19)







Mouse to Mouse 4th Album

01.実弾(Nothing's gonna syrup us now)
02.リアル
03.うお座
04.パープルムカデ
05.My song
06.I・N・M
07.回送
08.変態
09.希望
10.夢
11.Mouth to Mouth
12.メリモ
13.ハミングバード
14.Your eyes closed


 まず、音の質感が『coup d'Etat』に戻ってます。個人的には嬉しい回帰。
 それに伴って、隙間を活かした演奏が増えてます。アコースティック系は隙間の活かし方が重要ですからね、これは非常にいいプレイ。
 またいくつかの曲で、リズムの立った曲があるんですが、これもまた素晴らしい。やっぱりこのバンド演奏上手いよな。
 歌詞はというと、優しくなりましたね。言葉遊びが本当に「遊び」になってきた。ネガティブ系のバンドはいつかこう変化していくものですが、これはアリな変化では。
 「この音楽を愛してるんだ」「俺は死んだら完成なんだ」「幸せはヤバいんだ」などと、このバンドなりの境地に辿り着いたことをうかがわせてくれます。幸せな倦怠感・鬱屈というか。「命によって俺は壊れた」「でも命によって俺は救われた」と言いつつ、最後で「妄想リアル」を連呼するのもいいよねー。
 攻撃的な部分が完全になくなったわけではなく、#12では相変わらずの皮肉っぷりを披露。「(前略)二酸化炭素吐いてんじゃねぇよ」「絶対コレは買いの絶対って何?」単純に売れ線に走ったわけではないということを思い知らせてくれるかのよう。また、反戦をテーマにした曲もあり。
 綺麗なことも汚いことも、口触りよく演奏し、歌ってしまう彼らのセンスに乾杯(2012.8.20)







Syrup16g 5th Album

01.ニセモノ
02.さくら
03.君をなくしたのは
04.途中の行方
05.バナナの皮
06.来週のヒーロー
07.ラファータ
08.HELPLESS
09.君を壊すのは
10.scene through
11.イマジネーション
12.夢からさめてしまわぬように


 アルバム全体から漂う喪失感。ああ、本当に終わってしまったんだなと、受け取る側も感じざるをえない内容です。
 そう思うのは、多少なりとも彼らの音楽に思い入れのある方々だけでしょうけど。個人的にはレベルが非常に高いと思うし、好きなバンドなんですが「1曲目から何暴露してんだ」と突っ込みたくなってしまった。「破滅の美学なんかを利用して〜」「結局俺はニセモノなんだ」モノスゲーなオイ。
 その他の部分の違いは、アコースティック率が減ったことと、メロディが一層分かりやすくなったこと。メロディに関しては美メロでとっつきやすくなったと言える。歌謡曲じみたラインすら辿る#1、和風ではないけど多くの日本人の琴線に触れるであろう#2、爽やかな空気に包まれた#5など、オリジナルアルバムの中では一番聴きやすいのでは。
 これ書いてる現在、オリジナルメンバーの消息が不明みたいなんですよね。ここまでが計算だったら物凄いバンド。若い内に水商売で稼いで、売れ残る前にさっさと引退して高収入の男を捕まえる女みたいな(2012.8.21)





inserted by FC2 system