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U2


1st Album Boy 1980年 ★★★
2nd Album October 1981年 ★★★★
3rd Album War 1983年 ★★★★
4th Album The Unforgettable Fire 1984年 ★★★★
5th Album The Joshua Tree 1987年 ★★★★
6th Album Rattle and Hum 1988年 ★★★★
7th Album Achtung Baby 1991年 ★★★★★
8th Album Zooropa 1993年 ★★★★
9th Album Pop 1997年 ★★★★
10th Album All That You Can't Leave Behind 2000年 ★★★★★
11th Album How to Dismantle an Atomic Bomb 2004年 ★★★★★








Boy 1st Album

01.I Will Follow
02.Twilight
03.An Cat Dubh
04.Into The Heart
05.Out Of Control
06.Stories For Boys
07.The Ocean
08.A Day Without Me
09.Another Time, Another Place
10.The Electric Co.
11.Shadows And Tall Trees


 アイルランドから生まれてきた、世界屈指の仲良し&綺麗事バンド・U2のデビューアルバム。
 デビュー作からいきなりアートワークスについてのアクシデントで、メンバーの写真に差し替えられたなんてエピソードもあります。「顔が侮辱行為」と言い放った秋村球審並である。
 それはともかく、残響の効いた透明感あるギター、8分音符を基軸としたグルーヴィーな演奏……冷たく澄んだハードロックみたいな音楽を鳴らしています。90年代のV系が好きな方に、ちょっとオススメできるかもしれません。
 ただ、自分はそこまでハマれませんでした。けっこうしつこくリピートしたはずなんですが、どの曲も似てるように聴こえるんですよね。あとボノの詰まったような、息苦しい歌い方が個人的にあまり好きじゃなくて。歌詞にも感情移入はできなかったし。少年時代のやり場ない悲しさや焦りみたいなものは、けっこう伝わってきたんですが。
 初期の作品全般に言えることですが、音の隙間が苦手な人にはあまり合わないバンドかなーと(2013.3.28)






October 2nd Album

01.Gloria
02.I Fall Down
03.I Threw A Brick Through A Window
04.Rejoice
05.Fire
06.Tomorrow
07.October
08.With A Shout
09.Stranger In A Strange Land
10.Scarlet
11.Is That All?


 #1の間奏が象徴する演奏の細かい技の妙、アレンジの幅が少々広がった以外は『Boy』と大きく変わらない気がしますね。
 個人的にはこちらの方が好きです。前述した理由に加え、描き出すスケールや衝動感も強まっていますからね。幻想水滸伝1と2ぐらい違う。分かり辛い喩えですみません。なので曲で具体的に挙げますと、特に#4の後半、激しいドラミングからの疾走は心揺さぶられました。
 ベストトラックはトラッドな雰囲気がクサい#6ですね。「うんちくんないトゥモロー」「うんちいっぱいトゥモロー」はいかがなものかと思いますが。別の意味でもクサい。デトロイトメタルシティに出てきたデズム並(2013.3.29)






War 3rd Album

01.Sunday Bloody Sunday
02.Seconds
03.New Year's Day
04.Like A Song...
05.Drowning Man
06.The Refugee
07.Two Hearts Beat As One
08.Red Light
09.Surrender
10.'40'


 このアルバム辺りから、政治的・戦争的なメッセージを強く込めた楽曲が目立つようになっています。
 自分は是非云々より、アイリッシュの気風が出ていていいなーという感情がまず浮かんできました。荒涼とした大地で育まれた反骨の炎。それをちゃんとプレイで表現しているんですよ。おのずと自身らのアイデンティティやイデオロギーを出しながら、言いたいことをストレートに言う。ロックなスタンスじゃないですか。
 確かに言ってることは綺麗事の部類に入るでしょうが、全世界で何百万何千万と売れて、人々に強い影響を与えているのだから、そこは純粋に評価すべきポイント。
 演奏やソングライティングも、一段とレベルを上げていて聴き応えがありますしね。単純に80年代ロック/ポストパンク的な楽曲として楽しむのもいいでしょう(2013.3.30)






The Unforgettable Fire 4th Album

01.Sort Of Homecoming, A
02.Pride (In The Name Of Love)
03.Wire
04.Unforgettable Fire, The
05.Promenade
06.4th Of July
07.Bad
08.Indian Summer Sky
09.Elvis Presley And America
10.MLK


 音だけを抜き出して聴くと、ここまでの作品の集大成とも言える作風に仕上がっております。更に、彼らの優しい部分を特に濃く取り出したかのように、聴きやすくなってもいます。それを凝縮したのが、タイトルトラックの#4。言うまでもなく名曲です。
 今作も当然シリアスな作風は維持されており、タイトルは原爆に関係したものですし、マーティン・ルーサー・キングに捧げられた楽曲もあります。
 全体的にスケールが広大になっているんですが、特に中盤の空気が好きですね。後にポストロックと呼称されるような音楽性に、ちょっとだけ足を踏み入れているんですよね。『Boy』の感想で、ボノの歌い方があまり好きじゃないなんて書きましたが、こういう曲にはとてもマッチしていて良いと思います。
 ロックに対して衝動性を第一に求めるリスナーには、今作のような路線はあまり受け入れられないかも知れません。しかし自分はこういう音楽性も好物なので、すんなり入っていくことができました。
 ……うーん、どうも熱く語れないで申し訳ないです。元々の性格もあるっちゃありますが、このバンドと共に青春を駆け抜けた訳でもないし、ここで歌われている世界に身を置いている訳でもないから、どうも燃えられない。「おどりゃクソ森、わしゃ許さんぞ!」ぐらい言えればいいんでしょうが。
 ましてや萌えるなどもってのほかで。BoyやWarのジャケに出ている少年になら可能かも知れませんが。何言ってるんでしょうね自分は(2013.3.31)






The Joshua Tree 5th Album

01.Where The Streets Have No Name
02.I Still Haven't Found What I'm Looking For
03.With Or Without You
04.Bullet The Blue Sky
05.Running To Stand Still
06.Red Hill Mining Town
07.In God's Country
08.Trip Through Your Wires
09.One Tree Hill
10.Exit
11.Mothers Of The Disappeared


 前作の続きのように始まる今作は、更にスケールを広げた雄大なサウンドスケープが展開されます。つまりヨシュアトゥリー=この木なんの木気になる木ですね、分かります^^(本当はアメリカ南西部の砂漠地帯に生えるユッカの樹です)
 それはともかく、相当聴きやすくなった印象を受けました。洋楽なんてボンジョヴィとかエアロスミスとかクイーンとか、有名所しか聴かないよ……なんて方でも、ある程度は受け入れられるかと。ちなみに前記したバンド達とは方向性が全然違いますのであしからず。
 何だろう、若干音響系な方向へ行きつつも、やっぱり根っ子の部分ではロックなバンドサウンド作りを心がけてます。そして#8ではブルースハープを取り入れたり、#9のラストではゴスペルを行ったりと手広い。ただしこれらの要素は正直、取って付けた感があるように聴こえてしまい、完全に融和しているとは言い難いです。
 これらを総合すると「何売れ線に走ってやがるんだ腐れ綺麗事バンドが」とは、ひとまずは言えないですね(2013.4.1)






Rattle and Hum 6th Album

01.Helter Skelter
02.Van Diemen's Land
03.Desire
04.Hawkmoon 269
05.All Along The Watchtower
06.I Still Haven't Found What I'm Looking For
07.Freedom For My People
08.Silver And Gold
09.Pride (In The Name Of Love)
10.Angel Of Harlem
11.Love Rescue Me
12.When Love Comes To Town
13.Heartland
14.God Part U
15.The Star Spangled Banner
16.Bullet The Blue Sky
17.All I Want Is You


 彼らのライブツアーを追ったトキュメンタリー映画のサウンドトラックみたいな扱いなんだそうですが、ちゃんと新曲も入っているので、使い回し感はなく普通に楽しめます。ただしどうしてもアルバムの性質上、散漫というかまとまりがない印象を受けてしまいました。
 1曲目からいきなりビートルズのカバーだったのは意表を突かれました。U2がやってもカッコいいですね。個人的にはOASISのヴァージョンの方が好きなんですけど。他にもジミヘンのカバーをやったりしていますが、こちらも悪くないです。
 もう一つのハイライトとして、#2でギターのエッジが歌っているサプライズもあるんですが、これが普通に上手いんですよね。
 上記した部分だけに限らず、全体的にパフォーマンスが素晴らしく、決して内に篭って愛や平和を喚いているだけのバンドなんかではないというのが良く伝わってきました。ですがこれはファン向けだと思うので、聴くのならば他の作品(特にこれ以前のアルバム)に触れてからの方がいいでしょうね(2013.4.2)






Achtung Baby 7th Album

01.Zoo Station
02.Even Better Than The Real Thing
03.One
04.Until The End Of The World
05.Who's Gonna Ride Your Wild Horses
06.So Cruel
07.The Fly
08.Mysterious Ways
09.Tryin' To Throw Your Arms Around The World
10.Ultra Violet (Light My Way)
11.Acrobat
12.Love Is Blindness


 ジョジョ4部でも引用された超有名作だッ!! これまでから大胆に路線を変更していると共に、全員プレイ面で、特に連携力において更なる伸びを見せており、グルーヴ力が格段に増しています。#1・2の独特なダンスビートからしてもう違う。
 歌と各演奏陣とシンセが、それぞれ独立したフレーズでのノリを有していて、それを違和感なく溶け込ませている感じ。これが聴いていてとても心地良いんですよね。雄大な風景に人の温かみを足した、U2ならではの描写。
 ベストトラックは#5。イントロのギター音からグイっと引き込まれ、段々と盛り上がっていく曲展開が凄く良い。裏をかくように、最後はフェードアウトしていくのがまたナイス。前述した#1・2も素晴らしいし、叙情性を切なる歌声とフィードバック効かせまくりのギターに乗せた#11も胸を打ちます。そしてこの時点で、#12にてポストロックのようなことをやっているのにも驚かされました。Radioheadよりも早かったのかと。
 #6はストリングスの使い方がくどいとか、#7はもっとパーカッションの手数を増やしてもいいんじゃないかとか、不満点が全くないわけではないんですが、それでもこれは90年代に突入するに辺り、新たな世界を切り開いていったというイノベーションに相応しい完成度の高さだと言っていいでしょう。
 歌詞がちょっと軽くなってね? 俗っぽくなってね? とか言ってはいけません。ちゃんとシリアスな部分もたくさん残ってるんだから。何だか今作は女性性を強く意識している印象がありますね。そういう部分でも『Boy』と対比させて、差別化を図ろうとしたんでしょうか(2013.4.3)






Zooropa 8th Album

01.Zooropa
02.Babyface
03.Numb
04.Lemon
05.Stay (Faraway, So Close!)
06.Daddy's Gonna Pay For
07.Some Days Are Better Than Others
08.The First Time
09.Dirty Day
10.The Wanderer


 前作よりもエレクトロニカ・ポストロック方針を強化しております。陶酔的。
 明らかにキラーフレーズに託した聴かせ方ではなく、全体の音で勝負しているので、美しい歌メロだとか、泣きのギターソロを期待しているリスナーには絶対向かないでしょう。そもそもそういう人がこんなアルバムを手に取るとは思えませんが。
 自分が一発で印象に残って気に入ったのは#3ですね。「Don't〜」、つまり「○○してはいけない」なんてことを無機質にボソボソと歌い続けてるんですが、実に示唆に富んでいるなと。こんな歌を東洋的なシンセ音とスクラッチ、硬質なリズムトラックが支えているっていう組み立て方が面白いです。タイトルも『南無』から取ってるんだろうし、怪曲と呼ぶに相応しい。
 ハウス+ダンスビートな#4も、グルーヴ感が素晴らしい。その辺のなんちゃってダンスユニットより断然ノレます。もうインド映画と死霊の盆踊りぐらい違う。
 こういう路線だったらもっとロック要素を薄めてでも徹底して良かったんじゃないかとも思うんですが、クオリティ自体は高いんじゃないでしょうか。個人的にはもっとベース音強調して欲しかったんですけど(2013.4.5)






Pop 9th Album

01.Discotheque
02.Do You Feel Loved
03.Mofo
04.If God Will Send His Angels
05.Staring At The Sun
06.Last Night On Earth
07.Gone
08.Miami
09.The Playboy Mansion
10.If You Wear That Velvet Dress
11.Please
12.Wake Up Dead Man


 アフリカンミュージックを上手くダンサブルなロックに落とし込んだ1曲目からして良作の予感。#2も程よくポップで、甘めのメロディを気持ちのいいグルーヴに乗せてノリノリにさせてくれます。
 以降の流れをダイジェストで追いますと、打ち込みを中心にスペーシーな空間を形成する#3、これまでとは打って変わって歌を中心に聴かせるミディアムバラード#4、勇ましげなアコギが印象的な#5、#2と似た方向性のミディアム曲#6、けたたましい高音ノイズギターと、シンプルそうで細かいリズムワークがトリップへと誘う#7、淡々と進行しながら後半で瞬間的にテンションを上げてくる#8、スローな裏打ちが、聴いていて眠気を誘う(貶してません)#9、静謐な風景描写に心安らぐ#10、淡々としたポストロック風味の#11、そして#12では前曲のテンションを引きずったまま、静かに幕を下ろします。
 序盤はインパクトがある代わりに、後半の曲はあまり印象に残らないんですが(楽曲よりも構成の問題)いいんじゃないでしょうか。Popなんて付けながら、所々マニアックなプレイやアレンジを入れているのは面白いですね。確かにそれでも聴きやすさが失われてはいないから、大衆的ではあるんですけど。
 この路線、シューゲイザー系のバンドですとか、他にはHot Chip辺りが好きな人はイケるでしょう(2013.4.8)






All That You Can't Leave Behind 10th Album

01.Beautiful Day
02.Stuck in a Moment You Can't Get Out Of
03.Elevation
04.Walk On
05.Kite
06.In a Little While
07.Wild Honey
08.Peace on Earth
09.When I Look at the World
10.New York
11.Grace


 80年代の、ストレートな衝動を吐き出したU2と、90年代の、シンセを大胆に導入して独特のグルーヴィーなロックを生み出したU2、この2つの時代を経てゼロ年代の最初に生み出したのが、この原点回帰路線なのかと。ちょうど2つを踏まえて落とし込んだような音なんですよね。
 えらく普通になっちまったなというのが、正直な第一印象です。しかし何度も聴いている内、この普遍性が心に沁みてくるんですよね。本当にクセがないので、洋楽初心者でも安心して入っていけるでしょう(2013.4.9)






How to Dismantle an Atomic Bomb 11th Album

01.Vertigo
02.Miracle Drug
03.Sometimes You Can't Make It on Your Own
04.Love and Peace or Else
05.City of Blinding Lights
06.All Because of You
07.Man and a Woman
08.Crumbs from Your Table
09.One Step Closer
10.Original of the Species
11.Yahweh


『原子爆弾解体新書』なる物騒な邦題がインパクト大のアルバム。
 音的には前作の流れを継承しているように聴こえました。かつ、ロックの様々な形を最大限に表現したがっているとでも言いますか。特にギターがザクザク弾いてて、聴いていて気持ちいいです。これまでのように空間を作るためじゃなくロックな衝動を出すために、時にディストーション全開、時にクリーンに弾き倒してるんですよ。
 あとアルバムを貫くテーマや詞の内容などについてですけど、タイトルほど物騒じゃないですね。これは曲も含めての話なんですけど、ここまでの20年以上の活動で積み上げたものがあるからこそ、今更こういう路線でも許されるって感じがするなと。
 ぽっと出でこんな音楽やられても、下手したら「寝言言ってんじゃねぇよ目元に半端なモザイクかけやがって」的な罵倒をされるかもしれないじゃないですか。OASISのノエルは別の形で悪口言ってましたが。
 ベテランに差し掛かろうとしている彼らの円熟味が滲み出ている、いい作品だと思います(2013.4.10)







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